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長谷川穂積氏 東京五輪新競技 サーフィンに挑戦 波と格闘…学んだことは?

 デイリースポーツ・ボクシング評論「拳心論」でおなじみの元世界3階級制覇王者、長谷川穂積氏(38)が自らの体を張る挑戦シリーズ。今回は、来年の東京五輪で新競技として採用されたサーフィンを初体験した。指南を仰いだのはハワイでも名を残すレジェンド、脇田貴之氏(47)。女子の五輪代表候補、脇田紗良(17)の父でもある脇田氏が教室を営む神奈川県藤沢市片瀬海岸で、チャンプが波と格闘して学んだこととは-。

  ◇  ◇

 オアフ島には「ワキタ・ピーク」と名前が残る波のポイントがあるという。初めて教わるのがそんな伝説のサーファーということで、僕も準備に怠りはない。2週間前から、現役時代と同じくらいの体幹トレーニングをして自分を追い込み、一時は足が痛くて立てなくなったほどだ。ジムのリングを海に見立てて、その中央で腹ばいになってパドリングの予行演習もした。こっそり練習していたところをトレーナーに見られてしまったが、イメージトレーニングもバッチリだ。

 初対面の脇田さんはサーフィン界のレジェンド。とてもソフトな雰囲気だけど、海の中では厳しい人だと聞いていた。こう見えても僕は意外と打たれ弱いので、先にお願いしておく。「僕はほめられて伸びるタイプなんです」。「大丈夫ですよ。すぐにできます」。笑顔にホッとした。

 脇田さんのお店「Sylphide Club(シルフィード・クラブ)」で、ウエットスーツとボードを借りる。あまりに長いボードに驚くが、脇田さんは「ショートボードでもうまくなれるけど時間がかかる。(長い板は)初めは不便。でも、動かないものを動かそうとすることで基本ができるんです」と説明してくれた。何でも基本が大切。ボクサーで言うと、僕はこれからシャドーを覚えるレベルなのだから。

 まず陸上でレクチャーを受ける。初心者が一番苦戦するのはやはりパドリングだそうだ。「体幹で抑えるのが大前提。自分の体が動いてしまうと板が抑えられない。暴れ馬に乗っているイメージですね」。両手で肩の下から上半身を押し上げるようにして起き、「GO!」の合図で瞬時に立ち上がる。

 この時、前足をどちらにするか。ボクシングではサウスポーの僕は右足が前だが、サーフィンではなんだか左足が前の方がしっくりくる。昔、スノボやスケボーをやってた時もそうだったので、同じようにやってみた。水平な地上では難なくできるが、これが波に乗ってできるのか。

 いよいよ海へ。板を担いで海岸まではだしで移動する。海中は意外なほどに暖かい。ウエットスーツのおかげもあるが、海水の温度は気温より数カ月遅れてくるため、今はまだ暖かいそうだ。

 波を待ってパドリング。いいタイミングで脇田さんが後ろからうまく押してくれる。勢いがついたところで「GO!」。グラグラしながらも立てた!十数秒だけどめちゃくちゃ気持ちいい。1本目から立てるなんて、体幹トレーニングの成果が出たというものだ。

 ただ、必死に立とうとするとどうしても腰が引けてしまう。サーファーの姿がかっこいいのは、板の上で前を見ているから。でも、実際にやってみると、板上では体が横向きなので、前を見るのはとても難しい。横を向いてしまったり、波を見てしまったり。

 脇田さんに押してもらって4、5本乗っているうちに、僕の負けん気に火がついてきた。押して勢いをつけてもらわずに「一人で乗ってみたい」とお願いした。でも、これがまた難しい。パドリングだけで波に乗れるほどのスピードが出ないのだ。初心者の壁に苦しむ。うつぶせで何度も繰り返しているうちに、肋骨と、男の大事なところが板にすれて痛くなってきた。

 それでも、何とかパドリングだけで勢いがつき、うまく波に乗れるように。20秒くらいは立っていただろうか。海岸沿いまでたどり着けた。そこからは無我夢中。波がいいと落ちる気がしないのが不思議だ。だんだん砂浜が近づいてくる気持ちよさったらない。

 1時間半の予定が3時間。一度も海から出なかった。夢中で波に乗ることだけを考えていると、嫌なことも全部忘れてしまう。波に乗れるともちろんうれしいんだけど、同じくらい楽しいのが、波を待っている時間。もう波が来なくてもいいなあと思えるほど。脇田さんの穏やかな笑顔は、そんな日々から生まれているんだろうな。

 それに、サーフィンからは人生も感じる。脇田さんはいとも簡単に波に乗って本当にかっこいいけど、自然が相手のスポーツだ。波は後ろからくるからよくわからないし、同じ波は二度とこない。一度「この波だ」と思って乗ったら、頑張って最後まで乗り続けるしかない。なんだか女性との出会いのようでもある。

 ずっとやってみたくて、でもハードルが高かったサーフィンは、想像を超える楽しさだった。今から初めても70歳まで楽しめるらしいし、五輪競技として高いレベルの選手を見るのもまた面白い。

 すっかりハマってしまった。早速ボードを買おうと決心し、脇田さんから初心者が選ぶべきポイントを聞いて初挑戦は終了。そうそう、もう一つ決めたことがある。それは、ハワイの海の近くに別荘を買うこと。そして、あの大きな波に乗ること。そのために一生懸命働こう!そんなモチベーションが湧いてきた。

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