12年連続花園に導いた尾道・梅本監督、今春から倉敷初代ラグビー監督に就任

尾道でラスト采配となった昨年12月30日の石見智翠館戦。敗戦で涙する選手を出迎える梅本監督(花園ラグビー場)
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 尾道高ラグビー部を指揮し、12年連続で花園へ導いた梅本勝さん(55)が本年度限りで同高を退任し、今春から岡山・倉敷高に新設されるラグビー部の監督の就任する。保健体育の教員でもある梅本監督は「文武両道」と「社会に貢献する人間形成」を掲げ、ラグビーにとどまらない熱血指導で知られている。尾道高での取り組みや今後の目標を聞いた。

  ◇   ◇

 -前任の江の川高(現石見智翠館高)を退任し、尾道高に赴任したのは2001年11月でした。

 「翌春、ラグビー部を創部するということで声をかけていただいた。当時、部員は1年生11人のみ。それでは足りないので他のクラブからも引っ張ってきたりして18人でスタートした。大変だったけど、真っ白なキャンバスに絵を描いていく楽しみがあった」

 -創部3年目の04年度に花園に初出場。2年空いて、07年度から今年度まで12年連続で花園に出場。14年度大会では4強入りも果たしました。チームを強くする秘けつは。

 「時間の管理を徹底させることです。ラグビーをする時間、勉強する時間、食事をする時間、寝る時間…1日24時間という限られた中で自分をコントロールし、一つ一つの物事に集中して取り組む意識を持つことが、ラグビーでの決断力や判断力につながっていく」

 -日々の生活をラグビーに結びつけていくわけですね。

 「技術的なことももちろん大切ではあるけども、それ以上に重要なのは心です。どれだけ体を張って相手の選手へタックルにいけるか。そのためには責任感や使命感、あるいは仲間に対する思いやりが求められる。普段の生活の中で自分自身を律し、そういう心を養ってほしいと思って指導してきた」

 -選手はラグビー以外のスポーツにも取り組んでいました。

 「仲間の助けがあるラグビーと違って、たとえば相撲や柔道、陸上といったスポーツは自分以外、だれも助けてくれる人はない。個人スポーツを経験することで、ラグビーにおける仲間のありがたみを再認識できる。そういう狙いもあって『シーズン制』という形を採用して別のスポーツもさせていた」

 -グラウンド外でも選手にさまざま活動を課してきました。

 「クラスの代議員や文化祭、体育祭の実行委員を選ぶときは自ら手を上げるように指導してきた。行動力やみんなを一つにまとめていく力を付けさせるためです。東日本大震災や広島土砂災害、西日本集中豪雨でボランティア活動を行ったり、地域のイベントにも積極的に参加させた。しまなみ横断サイクリングや富士登山、鹿児島の知覧特攻平和会館の訪問、北海道探検合宿なども行った。いろんな経験を通して感性を磨き、自分というものを確立していってほしいというのが狙い」

 -人間形成が梅本監督の目指すところでもあるのですね。

 「私が目指しているのは、学校というくくりではなく、個人での文武両道。生徒自らが高い志を持ち、ラグビーでは全国大会で結果を残し、勉強でも難関大学に合格する。それが理想です。これまでもラグビー部から東大、京大、国立大医学部の合格者が出た」

 -社会に出ても各分野で活躍しているOBが多いと聞きます。

 「ラグビーというのはリーダーを育成するためのスポーツでもあるんです。尾道から育っていった子供たちがいずれは政財界、医学界、法曹界などでリーダーとなって日本を担っていってほしい」

 -ラグビーに話を戻します。最高成績が14年度大会のベスト4。日本一にはなることはできませんでした。

 「チーム全員が“日本一を取ってやろう”という気で1年間、本気になってやり続けることができれば、日本一になれた可能性はあった。しかし、そういうチームを作り切れなかったところに、指導者としての不甲斐なさがある。ただ、日本一にはなれなかったけども、自分がやってきたことは日本一だったと思っている(笑)」

 -倉敷高ではまたゼロからのスタートとなります。

 「これまで生徒たちには、いろんなことにチャレンジするように言ってきた。私自身も安住することなく、新しい環境に身を置いてチャレンジするということ。いろんな高校から誘いはあったけど、『尾道のようなリーダーを育ててほしい』と熱心に声をかけていただいた倉敷高にお世話になることにした。ラグビー部は春に発足することが決まっているだけで、まだ何も準備できていない。まずは部員を集めることから始める」

 -尾道高でやってきたことは倉敷高でも継続していきますか。

 「もちろん。長い道のりになるかもしれませんが、文武両道をしっかりと貫いて、目指すのは日本一。社会に貢献できる生徒を一人でも多く育てていくつもりです」

 ◆梅本 勝(うめもと・まさる) 1963年3月5日生まれ。尾道市出身。尾道商でラグビーを始め、大体大を経てマツダで5年間プレー。90年に江の川高の教員となり、ラグビー部を創部。花園には10年連続で出場する。2001年11月から尾道高の教員となり、翌春、ラグビー部を創部。同校でも12年連続を含む13度の花園出場。今年4月から倉敷高のラグビー部の初代監督に就任する。

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