桃田、日本男子初の金 不祥事から2年…謹慎生活乗り越えはい上がった

 「バドミントン・世界選手権」(5日、南京)

 男子シングルスの桃田賢斗(23)=NTT東日本=は世界ランク3位の石宇奇(中国)に2-0で快勝し、日本男子として五輪、世界選手権を通じて初の金メダルを獲得した。違法賭博問題による出場停止処分でリオ五輪に出られなかったエースが、3年ぶりに出場した大舞台で輝いた。女子ダブルスは初出場の永原和可那(22)、松本麻佑(22)組(北都銀行)が前回2位の福島由紀、広田彩花組(岐阜トリッキーパンダース)に2-1で逆転勝ちし、この種目の日本勢で1977年第1回大会の栂野尾悦子、植野恵美子組以来41年ぶりに優勝した。男子ダブルスで前回3位の園田啓悟、嘉村健士組(トナミ運輸)は中国ペアに0-2で敗れ、銀メダル。日本勢は今大会、史上最多6個のメダルを獲得した。

 軽打した最後のリターンはネットに触れて、相手側コートにぽとりと落ちた。次の瞬間、桃田は左の人さし指を天に向かって、そっと突き出した。胸に刻まれた日の丸にキスし、柔らかな笑みを浮かべる。日本男子として初めて立った世界選手権の頂点。「この優勝は一人ではできない。感謝の気持ちが勝因です」。どん底からはい上がってきたエースは素直な思いを口にした。

 圧勝だった。石宇奇の強烈なスマッシュを抜群の反応とフットワークでことごとく拾い、守備でリズムをつくった。「しっかりと足を動かして決め球をとったことが相手のプレッシャーになった」。攻めに転じれば、硬軟自在なショットでほんろうした。不祥事を起こしてコートを遠ざかる前よりもたくましさを増した攻守。まさに「王者」と呼ぶにふさわしい姿がそこにあった。

 2016年4月。違法賭博をしていたことが発覚し、無期限出場停止処分を受けた。自らの愚行でメダルが期待されたリオ五輪を棒に振った。「最初の頃は周りの目を気にしながら生活していた。あまり人に会いたくないというか…」。自らの過ちを責め続けた日々。だが、バドミントンへの情熱はひとときもさめなかった。

 所属先のNTT東日本による30日間の出勤停止期間が明け、練習再開初日となった同年5月30日。バドミントン部の須賀隆弘総監督は聞いた。「今でもバドミントンは好きか」。桃田選手は迷わず「好きです」と返答した。午前中は会社業務に就き、午後に練習する毎日。試合には出られない。それでも「チームメートは試合がある。練習相手とか、自分にできることをやろう」とサポートに全力を尽くした。

 自らを見つめ直し、地道に、ひたむきに歩んできた復活ロード。3年ぶりに帰ってきた世界一を争う舞台で、生まれ変わった桃田が最高の輝きを放った。「これからも周りの人への感謝を忘れず、レベルアップしていきたい」。決意の証しとして不祥事後、明るい色から染め直した黒髪に、充実の汗が滴った。

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