羽生にロシアの熱烈少年ファン プルシェンコに憧れた自身と重ね「ありがとう」
「フィギュアスケート・ロシア杯」(20日、モスクワ)
男子ショートプログラム(SP)が行われ、GP初戦に臨んだ世界王者の羽生結弦(22)=ANA=は、94・85点で2位発進となった。昨季のGPファイナル銀メダリストのネーサン・チェン(18)=米国=が100・54点をマークし、首位に立った。
演技冒頭、今季初戦の9月オータムクラシックでは右ひざの違和感で回避した4回転ループに挑むも、軽度の回転不足の判定。続く後半のトリプルアクセルは成功したが、最後の4回転トーループ-3回転トーループの連続ジャンプでまさかの転倒となった。初戦でたたき出した世界歴代最高得点から約18点も低い点数だったが、羽生は「悔しい思いもありつつ、修正点も見つかりつつ。体力も残っているので、明日につながるいいステップだった」と前向きに話した。
決して完璧な演技ではなかったが、羽生が世界のヒーローであることに変わりはない。演技後、観客から投げ込まれるプレゼントを拾うフラワースケーターが、羽生に近づいた。一生懸命に羽生の視界へ入り「ハロー!ハロー!」とその子供。手渡された紙を受け取った羽生は、その子の頭をなで「ありがとう」と答えたという。
羽生自身も幼い頃は「皇帝」と呼ばれたトリノ五輪金メダリストのプルシェンコ氏(ロシア)に憧れ、髪型をまねたこともあった。その子について「プルシェンコみたいな髪型でした」と、自身の幼い頃を思い返すかのように話した羽生は「スケートをやっていて、トップを目指している子供たちがこのロシアの地にはたくさんいると思うので、こういうフラワースケーターがこれからこのロシアの地で強い男子になっていったらいいなと思う」と笑った。
この日、羽生が憧れたプルシェンコ氏は羽生の演技をスタンドで観戦。その子供にとって羽生はきっと、羽生にとっての同氏のように憧れの存在だ。今回の彼に限らず“王者の演技”は国境を越えて人の心をつかみ、こうして継がれていくのだろう。