土江コーチが振り返る 桐生がキレた日「あなたは自信がない!」「五輪のファイナリストにすると誓え」

男子100メートル決勝を9秒98の日本新記録で優勝し、土江寛裕コーチ(左)と握手する桐生祥秀=9月9日
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 陸上の「日本学生対校選手権」(10日・福井県営陸上競技場)の男子100メートルで日本人初の9秒台となる9秒98をマークした桐生祥秀(21)=東洋大=を指導する東洋大の土江寛裕コーチが快挙から一夜明けた10日、報道陣の取材に応じた。

 入学から3年半、紆余曲折を経ての悲願達成に「まだ桐生と深くは話してないけど、少し良い気分をかみしめられたら」と、改めて喜びを口にした。

 二人三脚歩みは、決して常に足並みはそろっていたわけではなかった。指導の中で桐生に反発されたこともある。入学したばかりの大学1年生の春先。「ぐちゃぐちゃ言っちゃう方なので…」。細かい指導をする土江コーチに桐生がキレた。「あなたは自信がない!」。理論派の土江コーチと、感覚派の桐生。何事にも根拠を求め、慎重なコーチに桐生は問い詰めた。「俺は五輪でファイナリストになる。そうするとここで誓え」。答えを返せず、黙り込んだ。その後も課せられた筋力トレーニングの意味を見出せず、成績も波が激しかった。けがも重なり、不安定な師弟関係は続いた。

 それでも時間を追うごとに、徐々に足並みはそろい、9月9日、ついに悲願は達成された。前日の会見では感謝を口にする桐生に「4年の間でこんな風に言ってくれる日がくるとは…」と、涙を流した土江コーチ。卒業後も師弟関係は続くが、しっかりと紡ぎあわされた絆で、さらなる“最速”を求めていく。

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