「陸上・東京マラソン」（２６日、東京都庁前～東京駅前＝４２・１９５キロ）

　男子は前世界記録保持者のウィルソン・キプサング（３４）＝ケニア＝が、日本国内最高記録の２時間３分５８秒で初優勝。日本勢は井上大仁（２４）＝ＭＨＰＳ＝の８位が最高で、世界選手権（８月、ロンドン）の代表入りが濃厚となった。また、初マラソンの設楽悠太（２５）＝ホンダ＝が序盤から日本記録を上回るペースで飛ばし、２時間９分２７秒で１１位、日本人３位と健闘した。女子はサラ・チェプチルチル（３２）＝ケニア＝が優勝した。

　怖いもの知らずが最大の武器だ。初マラソンで２時間１０分を切る“サブテン”を達成した設楽は「挑戦より勝負をしようと思った。何より攻めの走りをした」と世界基準と真っ向勝負した。

　世界記録突破を狙って設定されたペースメーカーが率いる先頭集団。それを唯一視界に捉え、中盤まで追走したのが設楽だった。１７０センチ、４８キロのきゃしゃな体でハーフを１時間１分５５秒、３０キロ過ぎまでは日本記録（２時間６分１６秒）を更新するペースで飛ばした。しかし「３５キロ以降は経験のないきつさだった。体が思うように動かなかった」と３７キロ過ぎに井上、その後山本浩之にも捉えられた。

　「世界との差を痛感した」と唇をかんだ設楽。一方、若武者の果敢な攻めに、日本陸連の瀬古利彦・強化戦略プロジェクトリーダーはほくそ笑む。「前半は積極的に行ってヒヤヒヤしたが、９分台にまとめた。マラソンの能力が高いと感じさせた」。双子の兄、啓太とともに東洋大で箱根路を沸かせ、リオデジャネイロ五輪には１万メートルで出場。そのスピードが、低迷する男子マラソンに「風穴をあけてくれた」と同リーダーは言う。世界選手権出場は厳しいが「思い切り行くのが彼の持ち味。成長が見たい」と期待を寄せる。

　２時間８分１２秒（藤原正和）の初マラソン日本記録を目指した設楽は、攻めた結果にも「少し悔しい」と負けん気をのぞかせた。２０２０年への戦いは、始まったばかりだ。