錦織、受け継いだ元全仏王者の強い心

 「全米OPテニス」(6日、ニューヨーク)

 13歳で「世界一になる」と大志を抱いて渡った第二の故郷の米国で、大きな夢に迫った。錦織圭(24)=日清食品=は、今年から元全仏王者のマイケル・チャン・コーチ(42)に師事し、今大会で日本人初の四大大会決勝進出を達成。指導が結実し「彼とやってテニスが良くなっている。好結果が出ているのも彼のおかげ」と感謝した。

 厳しいコースへの強打で追い込む度に、チャン・コーチが観客席から身を乗り出して応援した。「集中力を絶やさずに戦うこと」と送り出したセンターコートで、師匠譲りの強い心が植え付けられた身長178センチの日本のエースは格上相手に動いて攻めた。第3セットをタイブレークの末に執念でもぎ取り、ジョコビッチを意気消沈させた。

 89年全仏で17歳の四大大会最年少優勝を達成した175センチのアジア系米国人チャン・コーチと、体格もスピードが武器のスタイルも似ている。現役時代に3度対戦し、チャン・コーチの負けん気の強さを知る松岡修造氏(46)は「圭はジュニアの時からどこに打つかという想像力と決断力がとんでもなかったが、チャンがコーチについて精神面も強くなった。4時間超えの試合を連続で勝ち、体力もある」と心技体の充実を指摘した。

 錦織は師事した直後、既にトップ選手の域に近づいていたが「10個以上直された。頭を使うので大変」と細かな教えに驚いたという。サーブやショットを放つ位置までも修正を受け「前へ、前へ」という指示とともに地道な反復練習と肉体強化で頭と体に刷り込まれた。これがベースラインの内側に入って打ち込む攻撃的スタイルの精度を高め、世界のトップ10入りも果たした今季躍進の要因となった。

 96年全米で準優勝に終わったチャン・コーチにはリベンジのチャンス。夢の続きを完結させるため、チリッチを迎え撃つ。

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