沙保里2連勝 父と一緒に闘った

 「レスリング女子W杯」(15日、小豆沢体育館)

 11日に最愛の父・栄勝さん(享年61)を亡くしたばかりの吉田沙保里(31)=ALSOK=は、悲しみの癒えない中、2試合に出て連勝した。前年覇者の中国戦では“宝刀”高速タックルで圧倒し、テクニカルフォール勝ち。ハンガリー戦でも開始26秒でフォール勝ちで圧勝した。日本は3戦全勝で1次リーグA組1位となり、16日にB組1位のロシアと決勝を行う。

 悲しみが癒えているはずはない。3日以上動かしていなかった体が万全なはずはない。それでも父と磨き上げてきた技は、こんなことで切れ味が鈍るほどやわじゃなかった。

 栄勝さんの遺影が見守る中、挑んだ前回優勝の中国との1次リーグ大一番。新階級となる53キロ級での初試合となった吉田だったが、開始1分25秒で“宝刀”高速タックルが炸裂。4点を奪うと、3分30秒過ぎには再びタックルから大量得点を奪い、一気に試合を決めた。マットを降りる際には、観客席にいた母・幸代さんに向けて左手を挙げた。

 続くハンガリー戦では開始10秒でバックを奪い回転させると、そのままフォールしてわずか26秒で勝利。鬼気迫る強さで、チームを決勝に導いた。

 「父の遺影を見るたびにうるっときたけど、一緒にマットに上がっている感覚で、心強かった。だから、ああいういい試合ができたんだと思います」

 父の死からわずか4日で迎えた試合。前日の告別式では出棺を見届けた後、火葬場には行かず、そのまま計量のため都内に向かった。栄監督によると「骨も拾えない状況で、試合に出なきゃいけないのか」という声もあったという。それでも最後は吉田自身が出場を決めた。栄勝さんはコーチとして、このW杯に行く途中に亡くなった。だからこの大会で勝つことこそが、父の遺志だと思った。

 16日の決勝ではロシアと対戦。「優勝しないと喜ばない。チーム一丸で優勝して、いい報告ができるようにしたい」。父が礎を築いてきた日本女子レスリングの最強を証明し、最高の手向けとする。

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