沙保里涙の出陣…お父さん勝ってくるよ

 「レスリング女子W杯」(15日開幕、小豆沢体育館)

 見ていてね、お父さん!11日に父・栄勝さん(享年61)を亡くしたレスリング女子55キロ級五輪3連覇の吉田沙保里(31)=ALSOK=が14日、三重県津市で営まれた告別式に参列。その後、上京し、女子W杯の前日計量に参加した。新採用の53キロ級で臨む吉田は、54・1キロ(規定により2キロオーバーまで可)でパス。父の遺志をくみ、最強女王がマットに立つ。

 涙は乾いていなかった。出棺を見届け、都内での計量に参加した吉田の表情は憔悴(しょうすい)していた。チームメート、コーチ、そして各国の選手たちも歩み寄り、励ましの言葉をかけられた。その度に瞳は潤んでいった。

 それでも、試合に出ることは何よりも栄勝さんが望んでいた。計量後、吉田は口を開いた。

 「今回は父のことで、ご心配をおかけしました。無事に通夜と告別式を行うことができました。父はW杯に行く途中で亡くなってしまいましたが、日本女子レスリングチームのコーチとして一緒に戦ってくれる。優勝することが父が喜んでくれることだと思う。気持ちを切り替え、チームのみんなと優勝できるように頑張りたい」

 自らに言い聞かせるように、意気込みを語った。

 11日以降、満足な練習は積めていない。この日も午後2時過ぎに出棺を見届けたが、移動のため火葬場まではついていけなかった。最後はおえつして「大好きだよ!!」と絶叫。涙で霊きゅう車を見送った。

 その足で、津市から名古屋まで特急で移動。新幹線で上京し、電車で計量会場に着いたのは午後6時35分だった。計量後は女子日本代表の栄監督と共に体を動かしたが、万全ではないことは確かだ。

 15日の1次リーグでは3試合中、1~2試合に出場する予定。順調に勝ち上がれば、16日の決勝にも出場する。告別式では「お父さんは世界一です。ここまで育ててくれて本当にありがとう。お父さんに教わったレスリングを忘れずに頑張ります」と、父に語りかけた。厳しかった父が最後に用意してくれた試練。きっと乗り越えてみせる。

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