愛媛・正田 Vで球団へファンへ恩返し

 【愛媛・正田樹投手】

 打たれたヒットの数はたった2本である。対香川後期10回戦(9月5日、坊っちゃん)正田樹は5者連続を含む10三振を奪い、7回無失点の好投で7勝目を手にした。今季ベストピッチと言っていいだろう。

 2度目の先発マウンドから立て続けに5連勝と、好調の波に乗った。3勝を挙げた7月には月間MVPも受賞している。だが8月に入り、自身の投球にかすかな違和感を感じている。

 「ここ3試合があまり良くなかった。同じ感覚ではやっているんだけど、どうしても体が疲れてきたりして、少しずつズレが生じてたんですね。思うようなピッチングができてなかった」

 投球フォームにおける“間”が少し早い。練習のなかでそれに気付き、修正して臨んだゲームがあの香川戦だった。

 「ああ、やっぱりこの修正点で良かったんだということで。また1つ、自分の引き出しにもなりますし」

 今季は台湾でスタートしたが、5月に自由契約となった。しかし、昨季まで同じ東京ヤクルトにいた加藤博人コーチが「愛媛に来い!」と声を掛けてくれた。

 「まだまだうまくなりたいですし、プレーもしたい。そういう気持ちがあるうちは『辞める』という選択肢はないです。そんななかで、どこもチームがないというのは悲しいというか。声を掛けて頂いたのはホント、ありがたいなと思って」

 投げることへの情熱は失っていない。上を目指す若い選手たち、NPB復帰を目指す小林憲幸、横山徹也らが、ここにはいる。本気で上を目指す人間が、さらに増えれば。

 「いまはもう、後期を獲ることをね。多分それがきっと、何かにつながると信じてやっています」

 何より勝つことが球団への、応援してくれるファンへの恩返しになる。大きな期待を受けて、次のマウンドへ。

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