愛媛・中村目指す左殺しのスペシャリス投
【愛媛・中村太紀投手】
スライダーの調子がいい。今季初先発となるマウンドを前に、中村太紀はマスクを被る横山徹也(元オリックスほか)から「これで行こう!」と声を掛けられていた。
対徳島前期1回戦(4月18日、JAバンク徳島)そのスライダーが生きた。四回裏二死まで無安打。5番・松嶋亮太に2ランを浴びたものの、6回3分の2を投げ2失点と、先発として十分な投球を披露している。試合後、加藤博人コーチが言った。
「きょう、得たものをしっかり次につなげられるように。つかんだら離すなよ!」
昨年までオーバースローだった。サイドスローへの変更を決断したのは誰かからのアドバイスではなく、自らの意思によるものだ。左打者からは背中から腕が出てくるように見える。内角に食い込むシュートと外に逃げるスライダーを武器に“左殺しのスペシャリスト”になれば、NPBへのチャンスが生まれるかもしれない。そんな思いからだった。
「今年の目標は『左バッターに打たれない』。右バッターに打たれても、左を抑えられればいいかなと」
今年で3年目、昨季もマウンドでサングラスを着用するなど試行錯誤を続けていた。すべては「試合で投げるための技術、力が欲しかった」からである。
「ホンマは2年で終わるつもりだったんですけど。(去年は)1年間、最後まで投げ切れへんかったんで…」
昨年8月、筋力不足から来るケガのため戦線を離脱した。今年はウエートトレの回数を増やし、体重も10キロ増えた。
「80試合、全部ブルペンで投げて。先発しても中継ぎでも、しっかり1年間投げられるようにしていきたいです」
ブルペンにはきょうも、登板を待つ中村の姿がある。
