テンパり解消し確実に刻む進歩の証し
【愛媛・伴和馬投手】
「いい球持っとるけどねぇ。試合ですぐテンパるからねぇ…」
愛媛・星野おさむ監督と談笑する香川・西田真二監督の声に、伴和馬はそれが自分のことだとすぐ分かった。3月のオープン戦でのことだ。「やっぱりそういう風に思われていたのか」と腑(ふ)に落ちた部分もある。
「大量点が多い。『0』か『3』ていうのが多くて。マウンド上で混乱するというか、なかなか冷静でいられなかったというのが、去年1年間の反省部分でした」
大学時代は外野手。本格的に投手に専念したのは香川入団後である。「完成度よりも潜在能力をアピールしたい」とスピードにこだわり、最速149キロも計測した。だが、経験値の少なさから結果を残せないまま、愛媛への移籍が決まる。
今季、萩原淳コーチと取り組んだのは「全力で投げながらコントロールを付ける」ことだ。まだ完全に“投手”のフォームになっておらず“野手”の形のまま投げている。「お前は上半身でしか投げていない」と言われ、下半身を使う投球フォームにも取り組んだ。考え方も変化している。
「当たり前のことなんですけど、結局ピッチャーは打たれる。去年は全部『0』じゃなきゃいけないと思っていて、1点獲られてからガタガタになってたんですけど。今年は悪いなりにどうやって投げたらいいか、が少しは分かったと思います」
マウンドに登り、練習投球のボールが内野を回って帰ってくる。そのとき、自然に野手1人1人に「お願いします!」と告げるようになった。
「(きっかけは)全然わかんないです。知らない間にやってました。『この回投げますんで、お願いします!』って感じなんですけど」
「自分がやらなきゃ!」とかたくなだった心は、バックを守る野手の存在に気付くことでより柔軟さとしたたかさを増した。
2年目の進歩の跡がはっきりと見えている。