韓国でストライクゾーンの見直し WBC敗退も遠因か

 3月31日に開幕した韓国プロ野球。まだ各チームとも11試合程度の消化ではあるものの、顕著なことがある。ストライクゾーンが広くなったことだ。関係者の指摘では「打者の内角と下限にはあまり違いがないが、高めと外角はボール1個近く広く取るようになっている」という。

 韓国のプロ野球はここ数年、超がつくほどの打高投低だった。なにしろ昨季、打率3割を超える打者が27人いた。リーグ全体の打率も2割9分。チーム別では優勝した斗山が2割9分8厘でトップだったが、斗山含む6チームが2割9分台で最下位10位のKtですら2割7分6厘だった。対照的に防御率はリーグ全体が5・17。斗山でも4・45で、最下位のKTは5・92というありさまだった。

 それが今季はリーグ全体の打率が2割6分1厘に、同防御率が4・12まで落ちている。各チームとも11試合。全体で55試合とサンプル数は少ないため、これですべてを言い切ることは乱暴ではあるが、それでも現状、ストライクゾーン拡大により超打高投低が是正され始めていることがうかがえる。

 ゾーンの直しは、かねて球界内外で指摘されていたことではあった。韓国では年末にウインターミーティングが開催されるが、昨年オフ時には、監督ら現場関係者からも是正の声は上がっていた。なにしろ「世界一狭すぎるストライクゾーン」と監督、コーチレベルから自虐的な表現まで出ていたほどだ。

 これでは投手が育たない。やたら冗漫な投手リレーが繰り広げられ、試合時間も長くなった。その試合時間も今季は平均が3時間11分。日本の感覚だとまだ長い気がするが、昨季のそれが3時間24分だったことを考えると、かなりの短縮になっている。

 韓国のスポーツマスコミでは、「WBCで1次敗退した際の要因」として、国内リーグのゾーンも問題に挙げられていた。「打者が他国の投手レベルに対応できなかったのは国内リーグのストライクゾーンが狭すぎ、打者に甘い環境になっていたから」という声が強かったのだという。そこで毎年、懸案になっていたゾーンの拡大に踏み切った、という見方もある。国際大会での打撃と国内リーグのゾーンにどれだけの因果関係があるのかはわからない。またKBO(韓国野球委員会)の審判部のトップも「WBCでの結果とは関係なく見直しは検討されていた」と釈明している。それはともかく。

 本来、ストライクゾーンとは野球規則に定められたものだ。それが球審という人間がジャッジすることで、傾向が生まれ、辛くも甘くもなるというのは、ある意味で野球という競技の特性ともいえる。それは日本国内のみならず、他国にも当てはまるというのが興味深い。

 さて、現在はおおむね現場、ファンからも好意的に受け止められているゾーンの是正だが、これがシーズン通して維持されるものかどうか?先人たる日本でも、幾度も是正がなされ、だが終わってみれば元に戻っていた、という繰り返しの歴史がある。韓国も同様に、徐々にまた狭まっていくのか。それとも維持される中で、プレーの質に変化の兆しが見えてくるのか。

 そんな着眼点もまた、野球の特性かもしれない。(スポーツライター・木村公一)

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