アジア記録を更新 張志豪がブレーク

 今、台湾プロ野球界で最も注目されている選手といえば、中信兄弟の張志豪(チャン・ツーハオ)外野手だ。2010年にプロ入りした29歳で、5月8日の統一戦でのヒットにより、開幕からの連続安打記録を26に伸ばした。無論、歴代最多の記録更新だ。ちなみにそれまでのアジア記録は元阪神の和田豊が持っていた24。張志豪はこの記録を塗り替えた。持ち味は思い切りの良さと柔らかい手首の使い方。ただ昨季までの通算成績は打率・276で安打も596と特筆すべきものは少ない。にもかかわらず、ではなぜ今季、ブレークしたのか。

 そのヒントを、今季から中信兄弟のコーチに就任したトミー・クルーズ打撃コーチに聞いた。彼は80年代に日本ハムで6年間プレーした経歴を持つ。しわがれた声で彼は、こう説明してくれた。

 「実は特別な指導はしていないんだ。彼に限らず、私はこのチームの打者に共通して話していることがある。まず後ろの脚にしっかりと体重を乗せること。つぎに頭をブレさせないこと。そしてバットを遠回りさせず、最短で出してくること。ほら、とてもシンプルなことばかりだろ?でも生身の人間である限り、維持するのは難しい。それでも私は徹底させることを選手たちに強く求めた。その結果が、今の成績に反映されているんだ」

 コーチの一言で選手がどれだけ変わるものなのか、どうか。それは一概には言えない。ただ中信兄弟の打者たちのスイングは、明らかに変わった。こねるようなスイングは影を潜め、内角も窮屈にならず振り切れている。だから去年までならファウルになっていた打球が今季はフェアエリアに落ちる。ここまで中信兄弟はチーム打率・340と2位の統一の・304を引き離しトップ。チームの順位自体も2位の義大を4・5ゲーム差と離し首位にいる。張志豪は、いわば好調な打線の象徴といっていいかもしれない。

 「そんな中でも彼は“ヒジの抜き方”がうまくなったね。内角も強く叩き、引っ張れるようにもなった。あえて挙げるならば、そういう成長もあるね」。クルーズコーチは微笑んだ。

 彼をアシストする要素はまだある。中信兄弟は今季、“台湾リーグの顔”ともいえる打者、林智勝(リン・ツースン)内野手をラミゴ・モンキーズからFAで獲得した。彼は昨季からまたがっているとはいえ、86試合連続出塁という途方もない記録を更新中。打率はなんと・412だ。そんな打者がクリーンアップに入る打線で、張志豪は攻撃的2番に座る。投手にしてみれば、いきおい勝負せざるを得なくなる。

 他方、「今季はボールが飛ぶ」という声を関係者からはよく耳にする。あるチームの投手は「去年までより10メートルくらい打球が違う」と嘆く声も。またストライクゾーンは去年から引き続き、狭い。

 もちろん、そうした要素が張志豪の記録にケチをつけるものでは決してない。それは張志豪の打撃を見ればわかること。柔らかいスイングから、力強い打球を放つ。遅れてきたスターという表現が適切かどうかはわからないが、まさに今、打順が巡ってくるのを楽しみにする。そんな打者に違いはない。

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