右投げ左打ち好打者・秋山流真逆の打法

 元中国新聞記者でカープ取材に30年以上携わった永山貞義氏(73)がデイリースポーツで執筆するコラム「野球爺のよもやま話」。広島商、法大でプレーした自身の経験や豊富な取材歴からカープや高校野球などをテーマに健筆を振るう。

  ◇  ◇

 カープ番記者をしていた現役時代、バイブルとしていた1冊の本があった。それは約50年前、哲学者の梅原猛氏らが野球を大所高所の視点から評論した「野球戯評」(地球書館)というエッセー集である。

 その中に梅原さんによる「左利き」という一文がある。それによると、「人類は長い間、右手文化をオーソドックスな文化とした。そして人類は右に価値を与えるとともに、左に反価値を与えた。左前、左巻き、左遷などすべて左には反価値、マイナスの意味が込められている」とし、本来は左利きでも、右利きに転向させられた子供が多かったとの論を述べている。

 この右手文化を反映して、半世紀前当時の野球も右投げ、右打ちの選手が圧倒的多数を占めていたのは、当然の現象か。その後、右利きながら、左打ちに転向する子供が激増したのは、イチローに代表されるようにそれだけの利点があったからだろう。

 確かに左投げは守るポジションが少ないが、左打ちは一塁への近道。さらに右投げが左打ちにした場合、利き腕の右手がバット操作の操縦かんのような役割を果たしていることから、球に当てやすいらしい。半面、ミートした後の押し込みが利き腕でないため弱く、長打が出にくいという弱みがあるという。

 こんなメリットからか実際、今の球界を見渡すと、このタイプの「好打者」がいるわ、いるわの大盛況。特にパ・リーグの首位打者が2012年の角中勝也(ロッテ)から昨年の吉田正尚(オリックス)まで10年連続で獲得中というのは、目を見張っていい現象なのではなかろうか。

 カープでもこの手の使い手はいた。すぐ思い浮かぶのが1990年初頭から約10年間、一堂に会した時の野村謙二郎、金本知憲、前田智徳。なにせ3人とも通算2千安打以上を放ち、名球会入りした記録と記憶を残した選手である。もし「右投げ、左打ち部門」というジャンルがあれば、「球界史上最強のトリオ」とのレッテルを貼られるに違いないと思っている。

 こうした傾向が顕著になる中、同種の秋山翔吾が今夏、カープに入団した。西武時代に「ヒットメーカー」と呼ばれていただけに、当初は球を前でさばく軽打タイプの好打者を想像していたが、一見すると大違い。何とアッパースイングで、ミートポイントが極めて手元に近い強打者タイプではないか。これが実は「秋山流」の安打量産法というのが著作の「技術と心」(廣済堂出版)を一読して分かった。

 それによると、11年に入団してからの3年間は、ダウンスイングでレギュラーを確保したが、14年の不振とそのオフ、右肘を手術したのを機にこの打法をすべて崩し、15年から再構築に乗り出した。

 改造の要点はバットを球の内側に入れるだけのただ一点。いわば三塁のコーチャーズボックスの方向を狙って打つ感覚のインサイドアウト軌道のアッパースイングで、これまでとは真逆の打法である。秋山の解説では、球を上からたたくとミートポイントは点になるが、この打ち方だと線で捕らえやすくなるという。

 おかげで15年はそれまで悩みの種だった二塁ゴロが激減。安打は面白いように飛び出し、216安打のプロ野球新記録まで樹立した。さらに17年は首位打者も獲得している。

 このころ西武ファンの間では、「今日の秋山は(右方向に)長打が出たから調子が悪い」との見方があったらしい。なにせ「いかに気持ち悪く打てるかを意識したことがある」というほど快打を求めない打者である。

 とすると、カープファンの秋山の観察法は、二塁ゴロや右翼への本塁打が目立つようになると、不調の兆し。左翼方向にポテンヒットを量産するようになると、好調という見立ては、あまりにも極論に過ぎるか。いずれにせよ、再度のコロナ禍に見舞われ床田ら故障者も出た中、チームの動向とともに秋山のバットにも大いに注目である。

 永山貞義(ながやま・さだよし)1949年2月、広島県海田町生まれ。広島商高-法大と進んだ後、72年、中国新聞社に入社。カープには初優勝した75年夏から30年以上関わり、コラムの「球炎」は通算19年担当。運動部長を経て編集委員。現在は契約社員の囲碁担当で地元大会の観戦記などを書いている。広島商高時代の66年、夏の甲子園大会に3番打者として出場。優勝候補に挙げられたが、1回戦で桐生(群馬)に敗れた。カープ監督を務めた故・三村敏之氏は同期。阪神で活躍した山本和行氏は一つ下でエースだった。

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