広島の真のエースは九里 北別府氏が高評価「点を取られても勝てる投手になった」
プロ野球は前半戦が終了し、五輪による中断期間に入った。広島の投手部門を総括したデイリースポーツウェブ評論家の北別府学氏は、チーム最多の7勝を挙げた九里を「点を取られても勝てる投手になった」と高評価。初の2桁勝利に太鼓判を押した。
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前半戦を終えた時点での先発ローテの顔ぶれは大瀬良、森下、九里、高橋昂、玉村、大道の6人。
開幕当初から野村、床田、中村祐の3人が欠けた状態になっているが、新戦力の発見につながる入れ替えだったとも言えるね。
現段階でのチーム勝ち頭は7勝(5敗)の九里。防御率は3・33と特筆すべき数字ではないけど、勝ち星がついてきているということには大きな意味がある。
少々点を取られても辛抱して、味方の得点以上に失点しない。それは点を取られても勝てる投手になってきたということ。
かつてのようなリキみが消え、逆に細かい制球力を身につけたことで、低めのゾーンへ投げきることができ、投球が安定してきた。スタミナもついてきているね。
今、安定感が一番あるのは九里だと思う。彼には“勝てそうだな”という期待感がもてるしね。
大瀬良が“病み上がりの年”ということもあって本調子ではない中、そこをカバーし、自分がエース的存在でいようと頑張っているところを評価したいね。
巨人戦で完投勝利を挙げた試合では、初めてスタメンでマスクをかぶった中村奨を最後まで“リード”し、先輩の貫禄を示していた。
ベテランの域になってくると、若い捕手を育てるという役割も担うことになる。そういう面でも投手陣の中心にいる選手になってくれたのではないかと思っている。
過去9勝が最多で、ここ3年は常に8勝止まり。なかなか2桁に届かないが、今年は念願の“大台”に乗ると思う。打線の援護によっては最多勝争いにも食い込んでいけるのではないか。
将来の大黒柱として期待の大きい森下は2年目のジンクスもなく順調に成長している。ただ、今年は昨年に比べて被本塁打が増えている。気になるほどでもないが、相手も研究しているということかもしれないね。
玉村は甘いコースに入っても、打者が空振りするなど、タイミングが取りづらい投手。テークバックでギアを入れ直すような独特の投球フォームだが、この持って生まれた特長を生かして、さらに伸びていってほしいね。
リリーフから先発に回って2勝を挙げた大道はよく腕が振れている。スピードもあるしフォークやカーブもある。今後が楽しみな投手だよ。
最後に高橋昂。いい時は手も足も出ない投球をする反面、悪い時は早い回で降板する傾向にあるよね。
スピードが少し落ちたかな。制球に神経を遣っているのかもしれない。まずはその制球を磨くこと。そして自分の投球スタイルを確立すること。
私の場合は2年目のシーズンで打たれまくって悩んだ時期があった。そこからスライダーを覚えて視界が開けた。
高橋昂も何か自信になる“自分の型”を見つけるといい。成長途上にある選手だけに楽しみの方が大きいよ。五輪ブレイクの間にもう一段、実力を高めてほしいね。
九里の成長は大瀬良にとっても良い刺激になっているのではないか。後半戦、チーム内に切磋琢磨できる相手がいることで、互いに勝ち星を伸ばしていくことを期待しています。