引退表明・新井の思い-カープは家族 現役最後の年に悲願の日本一誓う

 「広島10-0ヤクルト」(26日、マツダスタジアム)

 9月5日に今季限りでの現役引退を表明した広島・新井貴浩内野手(41)がインタビューに応じ、球団史上初のリーグ3連覇を成し遂げた喜びを語った。今季の戦いを振り返るとともに、後輩への思い、カープ愛、野球観などをたっぷりと語り、悲願の日本一を誓った。

  ◇  ◇

 -リーグ3連覇の喜びは過去2度と違うか。

 「優勝の喜びは変わらないけど、一昨年の優勝より昨年の方がみんな落ち着いていたし、今年の3連覇はさらに落ち着いていると感じる。若い選手が多いけど、試合の流れを分かっている。一気に攻めるところは行くぞ、と。打つ、打たないじゃなくて、四球を選んだり。我慢するところは守って、リズムを持ってくるぞ、と。みんなすごく成長している。洗練されてきている」

 -勝つことでそうなってきたのか。

 「勝つこともそうだし、広輔(田中)とキク(菊池)と丸が引っ張って、技術的なものもそうだし、試合での流れを分かっている。それを年下の野間や誠也(鈴木)らが見ている。そしてアツ(会沢)の存在も大きい。選手会長として陰となり、日なたとなり、若い選手を支えている」

 -今年も独走したが苦しかった時期は。

 「ゲーム差が開いているから独走しているように見えるけど、一つ一つの試合を見たら、ハードでタフな試合が多かった。終盤に逆転したり、しんどいゲームが多かった」

 -3連覇の要因は。

 「今、ヤクルトのコーチをされている河田さんと琢朗(石井)さんの教えが大きい。琢朗さんであれば、ノーヒットで1点取るにはどうしたらいいか。例えば無死満塁で内野が下がっている。併殺なら2死になって1点しか入らない。でも、オッケーという考え方。河田さんの言葉で印象に残っているのは、三振してワンバウンドで捕手がはじいたら、絶対に一塁まで走ろうと。野球に取り組む姿勢というか、可能性があれば小さなことでも徹底していく。そういう教育をされている」

 -成熟したチームにどう関わったか。

 「自分は深いことは考えていない。与えられたところで結果を出すようにと思っている。あとは日々の練習の積み重ね。しっかり準備をして、毎試合、毎打席、臨んでいる」

 -野手、投手に分け隔てなく話しかけている。

 「それは楽しいから。生まれつきいろんな話をするのが好き。自分の中でコミュニケーションを取ろうと思ってやっていない。たまに苦しいんだろうなという時は、わざと声をかけたりするけど、苦にならないから」

 -若い選手にも。

 「年齢、実績とか関係なしに人が好きだし、みんなかわいい。それはたどっていけば、カープというチームが好きだから、というのはあるかもしれない。みんなに良くなってもらいたい。それは2軍の選手でも一緒。家族みたいな感じかな」

 -投手、野手がバラバラになってしまうと、チームが崩壊する。

 「もちろん、家族ゲンカもある。ペナントは長丁場だし、いい時も悪い時もある。そこで我慢、忍耐が必要になる。でも、基本的には仲間で助け合うことが大事だと思っている。若い選手が多いので感情的になりやすいというか、瞬間的に頭に血が上ることもある。自分だって若い頃は、打てなかったらベンチ裏で大暴れしていた。28、29歳ぐらいの時かな。イライラしてバットを投げて壁に穴を開けて、修理代10万円を払ったこともある(笑)」

 (続けて)

 「自分もそういうのを繰り返して、年齢と共に感情をコントロールできるようになってきた。負の感情を表に出してロクなことはない。若いチームだからボーダーラインを越えたら自分が言わないといけないと思うけど、何でも頭ごなしに抑えつけることはしたくない。まだ大丈夫だと思いながら見ている」

 -言いにくさは。

 「叱るというのはパワーを使う。耳が痛いことは言いたくない。感情的に言うんじゃなく、愛情を持って叱るようにしている。感情的に言うというのは怒るということだから。チーム最年長だし、自分の役割だと思う。義務感じゃなくて、そういう使命感がある」

 -ベンチからどういう気持ちで若手の活躍を見ていたのか。

 「120%うれしい。自分が出られなくても、若い子が試合に出て活躍しているのは心からうれしい。それは去年も一昨年も。若い頃からプロ野球は厳しい世界だから、相手がケガすることを願っておかないとダメなんだ、ケガをしたらヨッシャー、自分の出番が来たと思えるヤツじゃないとプロじゃない、という話をたくさん聞いてきたけど、自分の考えと全然フィットしなかった。ポジション、年齢がかぶるような選手が試合で活躍したら『あいつ頑張ってるな、あいつが3本打ったら4本打ってやるぞ』と考えていた。『なんや、あいつ打ちやがって、三振せーや』とは思っていなかった。そんなことを思う自分でありたくないと思うし『お前が頑張るんだったら、もっと結果を出してやるぞ』と。そう思ってやってきたから。今のチームでもいいプレーが出たら、ワーッてなってるでしょ。今のカープの素晴らしいところじゃないかと思う」

 -丸、鈴木の成長をどう見ているか。

 「丸も誠也も研ぎ澄まされてきている。一発で仕留めることが多いし、見極めるところはしっかり四球も取る。ベンチですごいな、と思いながら見ている」

 -鈴木は4番の重圧もあるはず。

 「重圧は相当あると思う。4番バッターは孤独だから。自分では見せないようにプレーしているけど、大きなプレッシャーの中で戦っていると思う。この成績はすごい」

 -昨季敗退したCSを勝ち抜くには。

 「3連覇したけど、構えるんじゃなくて奪い取る気持ちが大事だと思う。CSファイナルSに勝って日本シリーズの出場権を奪い取りにいく。日本シリーズに出て日本一を奪い取りにいく。自分たちから攻めていく。プレーでも気持ちでも」

 -引退を表明して、1打席が重くなる。

 「それは今までと変わらない。カープに戻ってきてからは1年でもダメだったら辞めようと思っていたから。その積み重ね。目の前の1打席というスタンスは変わらない」

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