「ＣＳパ・ファーストＳ・第１戦、日本ハム２－０オリックス」（エスコンフィールド）

　オリックスが日本ハムの先発・伊藤を攻めきれず、黒星スタートとなった。五回無死一、二塁では紅林が痛感の遊ゴロ併殺打で逸機。デイリースポーツウェブ評論家の野田浩司氏は「（岸田監督の）これまでの戦いぶりから、あそこは送りバントを予想した」と語り、ベンチが選択した強攻策に驚きを隠さなかった。

　勝負を分けたポイントは、やはり五回無死一、二塁での併殺でしょう。僕はてっきり送りバントを選択すると思って見ていたら、紅林は初球から振っていってファウル。「あ、やらないんだ」とね。予想が外れて少しビックリした。

　岸田監督はシーズン中から手堅い策で点を取るような野球をしていたからね。決して攻撃的ではなく、一死からでも送るような采配も見てきた。１点取れば勝てるというような展開になれば、確率の高さを選ぶタイプというか。それだけになおさらだった。

　オリックスはペナント終盤になってリリーフ陣が安定し、接戦での強みを取り戻してきた。だからひとまず追いつけば、その後は十分に勝機を見いだせる。そう思ったんですけどね。

　日本ハムの伊藤はよかった。しかも、二回の３アウト目から四回の先頭まで５連続三振。速い球でグイグイ押して、イケイケのピッチングになっていた。

　ところが、四回２死一塁から杉本、若月に連続四球を与えて満塁のピンチを迎えた。この２人に対しては“決めにいった”速い、そして強い球が決まらなかった。伊藤自身、ちょっと嫌な感じがしていたのではないか。

　自分のボールに自信がある－まさしく調子がいいはずなのに“嫌な感じがする”という体験は僕もしたことがある。どこが悪いというものではなく“なんかおかしい”という感覚的なもの。

　この四回の２死満塁は広岡の遊ゴロで切り抜けたが、嫌な感じは五回に尾を引いていたように見えた。先頭打者の１番・宗にはボールが狙ったところに収まらず、太田には初球のフォークを捉えられて無死一、二塁。

　オリックスにすれば、伊藤を打ち崩すならこの回しかないという状況になった。

　そこで僕の頭に浮かんだのが手堅い作戦の送りバントだった。岸田監督ならそうするだろうと。オリックスのオーダーは流動的だから、３番という理由でヒッティングと決めつける必要はないので。

　結果は予想外の強攻策で併殺打。オリックスベンチは一気に崩しにかかったのかもしれない。この強気の策が裏目に出たということでしょう。

　紅林を３番に据えたのには相性を含め、それなりの理由があるに違いない。ただ、タラレバにはなるが、送っていたらどうなっていたかと思えてならない。

　ＳＣ初体験の山下は６回で２失点。ときどき引っ掛け気味のボールもあったが、決して悪いとは思わなかった。一方で、つけ入るスキを見せながら、つけ込ませなかった伊藤はさすがだった。経験の差でしょうね。