早大 10年ぶり日本一へコールド発進 伊藤5回2失点 初回ボーク、マウンドで転倒アクシデントもきっちり修正
「全日本大学野球選手権・1回戦、早大12-2東亜大」(10日、東京ドーム)
1回戦4試合と2回戦1試合が行われ、昨年準優勝の早大が東亜大を6回コールド勝利で下し初戦を突破した。今秋ドラフト候補の伊藤樹投手(4年・仙台育英)が5回2失点。雪辱を果たす10年ぶりの日本一へ向けて意気込みを示した。近大は神奈川大にコールド勝利。東北福祉大は九産大との名門対決を制した。西南学院大、中京大も初戦を突破した。
想定外のアクシデントにも動じない。どんな状況でも大崩れしないことこそエースの矜持(きょうじ)。伊藤樹の真骨頂だ。
初回、思わぬ形でピンチを背負った。先頭に左前打を許すと、続く伊礼への初球でバランスを崩し投球できず。ボークとなり二塁進塁を許した。さらに三盗を許してピンチが拡大すると、伊礼に左前適時打を献上。いきなり先制点を奪われた。さらに次打者への3球目で転倒。「プレートと土の間のところで軸足が滑って…」。慣れないマウンドに苦戦し、出はなをくじかれる形となった。
それでも、連続三振を奪うなど後続を断って最少失点でしのぐところが、東京六大学リーグを制したチームのエース。相手打者の反応を観察してスライダーを多投するなど修正しながら5回2失点にまとめた。視察した阪神の平塚スカウトは、「まだ50%くらいかな」としつつ、「キレとコントロールの良さが本来の持ち味」と評価した。
苦い記憶も脳裏によぎった。昨秋の神宮大会・準々決勝では環太平洋大に延長十回タイブレークの末に自身のサヨナラ暴投で敗戦。大学こそ違えど、同じ中国地区リーグの相手に「嫌でしたね。どうやって進塁するかとかを、かなり考えてくるチームだと思ったので、かぶる部分もあって」と本音を明かしつつ「去年の経験が生きたなと思います」と振り返った。
昨年は決勝で青学大に敗れただけに雪辱に燃える。「(神宮大会含め)2季連続で日本一を逃しているので、まずは決勝まで一戦必勝で戦いたい」。悲願の頂点へ、大黒柱としての役目を全うする。
◆伊藤 樹(いとう・たつき)2003年8月24日生まれ、21歳。秋田県美郷町出身。右投げ右打ち。177センチ、84キロ。6歳から仙南東スポーツ少年団で野球を始め、秀光中教校では軟式野球部。仙台育英では1年春からベンチ入りし、20年の交流試合を含め3年連続甲子園出場。早大では1年春からデビュー。