岩瀬仁紀氏 わずか10秒ほどの出来事から始まった鉄壁守護神の伝説 忘れられない一夜
野球殿堂博物館の表彰委員会は16日、今年の野球殿堂入りを発表。競技者表彰のプレーヤー表彰として、NPBで歴代最多となる1002試合登板、通算407セーブの岩瀬仁紀氏(50)が選出された。
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退路を断った。岩瀬氏が柔らかな表情で懐かしむのは、突然訪れた運命の日だ。「先発をやりたいとか、そういう希望はもうなくなったよね」。04年1月31日。翌日にキャンプイン、紅白戦を控えた夜のことだった。
当時の落合監督がいきなり、川上憲伸との部屋を訪問。「(川上に)開幕はないから。岩瀬、お前は抑えな」。時間にしてわずか10秒ほどの出来事だ。面食らった記憶と同時に、「やりたいと思っていたのと実際に指名されるのでは全然違う。チームを背負う。1番後ろで生きていくしかないんだ」と覚悟ができた。
指揮官から許されたハードルは年間3敗までだった。つながれた勝利のバトンを落とさずに守り抜くことが仕事だ。抑えを任された04年から14年までの10年間で、この約束を守れなかったのは07年の4敗のみ。信頼に結果で応えてきた自負がある。登板数やセーブ数ばかりに目が向く中で、敗戦数の少なさが絶対的な守護神としての証しだ。
一瞬の出来事が運命を変えることがある。ストッパー誕生秘話は、忘れられない一夜の記憶。後に407まで積み上げた鉄壁守護神の始まりの日だ。(デイリースポーツ・松井美里)