イチロー氏の無事を伝えた吹き込み原稿 記者人生で最も印象深い95年

 オリックスや米大リーグで通算4367安打を放ったイチロー氏(51)=本名鈴木一朗=の野球殿堂入りが16日、都内の野球殿堂博物館で発表された。17日に迎える阪神・淡路大震災から30年の節目に触れたイチロー氏は、子供たちに自身の経験を伝えていくこと、さらに「日本の野球の力になれるよう」進んでいくことを誓った。

  ◇  ◇

 30年前の震災当日、イチロー氏の無事を伝える原稿を電話で吹き込んだ。

 あの日、オリックスの若手選手たちは2月の沖縄・宮古島でのキャンプインに備え、現地での合同自主トレに出発する予定だった。記者も関空発の飛行機に同乗するはずだったが、夜明け前に発生した震災で自主トレどころではなくなった。

 何をすべきか悩み、イチロー氏らが暮らしていた神戸市西区の合宿所へ電話をかけた。つながらず、愛知県豊山町の実家に連絡すると、父の宣之さんと話ができた。イチロー氏から「大丈夫」と連絡があったこと、合宿所に大きな被害はなかったことを聞き安どした。

 開幕した95年のシーズン。チームは「がんばろうKOBE」を標榜(ぼう)し、復興の象徴として初の優勝を飾った。西武ドームでの優勝シーンよりも忘れがたいのは、大きな期待を受けた地元での優勝を成し遂げられなかった試合だ。目を潤ませながらイチロー氏は「神戸で決められなかったことは残念です」と声を絞り出した。

 翌年、チームは「宿願」を果たした。サヨナラ打を放ったイチロー氏はファンに向かって何度も拳を突き上げジャンプした。あれほど感情を爆発させた姿を見たのは初めてだった。2004年に殿堂入りした仰木監督が野球人生の中で最も印象深いものの一つに挙げたのも95年の優勝だった。

 吹き込みの原稿が日の目をみることはなかったが、95年シーズンは私の記者人生の中でも最も印象深い年である。(1994年~97年デイリースポーツ・オリックス担当・若林みどり)

関連ニュース

編集者のオススメ記事

野球最新ニュース

もっとみる

    スコア速報

    主要ニュース

    ランキング(野球)

    話題の写真ランキング

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス