泣き崩れた日本航空石川・福森 祖母と被災 「ばあちゃん、絶対に甲子園に連れて行くからな」の約束実現 夏こそマウンドに

 「選抜高校野球・1回戦、常総学院1-0日本航空石川」(25日、甲子園球場)

 試合後の選手控室で、たくさんの思いを背負った背番号19が震えていた。「勝ちたかった…」。壁に向かい泣き崩れた日本航空石川・福森誠也投手(3年)は、声を絞り出した。

 0-1の八回、2番手・長井が招いた2死満塁の危機。伝令を任されマウンドへと駆け出した。「みんなの表情が硬かったので、励まそうとテンションを上げて行きました」。最後にナインで帽子に記した文字を見た。

 「笑顔 感謝 恩返し 石川のために 共にがんばろう石川」

 1月1日、16時10分。激しい揺れが日常を奪っていった。輪島市の祖母・早瀬舞子さん(67)宅で尻もちをついた福森。舞子さんは倒れた物の下敷きになった。「私を置いて出ろ」と言われたが、おんぶして高台へ。鳴りやまないサイレン。舞子さんが働く輪島朝市の飲食店は炎に包まれた。

 当初は野球を続けることに葛藤があったが、家族に背中を押され避難先の山梨へ。甲子園で初のベンチ入りを果たした。

 アルプスで見守った舞子さんは思いを明かす。「普段はおちゃめな子。『ばあちゃん、絶対に甲子園に連れて行くからな』が口癖だった。実現してくれて夢のよう」。生まれたばかりの福森の面倒をよく見ていた舞子さん。「おんぶしたり、だっこしたり。震災の時、まさか私が背負われる立場になるなんて」-。

 初めての夢舞台は涙の味。福森は雪辱を誓った。「ピンチで切り抜けられる投手になりたい。夏は甲子園のマウンドに立ちたい」。能登の未来を照らす光が、聖地で輝いた。

 ◆福森 誠也(ふくもり・せいや)2006年6月12日生まれ、17歳。右投げ右打ち。最速133キロ。石川県七尾市出身。168センチ、70キロ。七尾東部中では軟式野球に所属。公式戦登板はなし。50メートルは6秒4。能登半島地震で被災。今大会のベンチ入りメンバーで唯一の石川県出身。

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