“負けないための鉄則”分析で破った壁 仙台育英が成し遂げた悲願の東北勢初V

 デイリースポーツ記者の心に残った今シーズンの試合、場面を振り返るオフ企画『一投一打』。アマ野球担当の森本夏未記者は、仙台育英が東北勢初の全国制覇を果たした8月22日の全国高校野球選手権大会・決勝を挙げた。“前年の敗戦”を教訓に同校OBの思いを体現。東北勢の悲願を成し遂げ、歓喜と勢いを持ち帰る試合となった。

  ◇  ◇

 東北のすべての人が歓喜に包まれた瞬間だった。8月22日、夏の甲子園決勝戦。1915年の第1回大会決勝で秋田中(現秋田)が敗れてから107年、夏は過去10回、決勝に進んだ東北勢が達成できなかった快挙を仙台育英が成し遂げた。

 “代名詞”の継投策で勢いに乗っていた下関国際も撃破した。先発した斎藤蓉投手(3年)が7回3安打1失点と好投。2番手の高橋煌稀投手(2年)も2回2安打無失点で締めた。打線も岩崎生弥内野手(3年)の満塁弾を含む13安打と爆発。同校として夏は過去2回、破れなかった壁をついに突破した。

 前年の負けを生かした頂点だった。2季連続の甲子園出場を目指した昨夏の宮城大会は4回戦で敗退。その3日後に当時3年生だった部員が後輩に向けてプレゼンを行ったという。同夏の最後の試合はもちろん、21年センバツで敗戦した天理戦など入部から2年半で印象に残った約10試合。対戦校ごとに守備、走塁、打撃などさまざまな視点から“負けないための鉄則”を分析し、後輩に伝えた。

 須江航監督(39)は当時を振り返り、「内容が素晴らしく、1、2年生の吸収度もよかった。すごい教訓になるのかなと思った」。誰に言われるでもなく、選手間で決めて行ったプレゼン。伝統として受け継がれてきた自主性が結果につながった。

 試合終了と同時に、須江監督は空を見上げて目頭を押さえた。「これまで全国制覇に挑戦した(同校歴代監督の)竹田利秋先生、佐々木順一郎先生。各6県の監督さん、選手。みなさんのおかげだなという気持ちがあふれた。あとは今まで日本一を取るぞと言っても取れなかった子たちの顔が浮かびました」。仙台育英OBはもちろん、東北6県の思いを体現した優勝は、来春以降の東北旋風を予感させる勝利だった。

 ◆仙台育英の今夏の甲子園勝ち上がり 初戦で鳥取商に10-0で快勝すると、3回戦は明秀学園日立に5-4で辛勝。愛工大名電との準々決勝では前半に6得点で主導権を握り、6-2で勝利を収めた。準決勝史上初の東北勢対決となった聖光学院戦では二回に11点を奪って18-4で圧勝。下関国際との決勝は3-1の七回に満塁弾などで5得点し、そのまま勝ちきった。投手陣は最速140キロを越える5投手をやりくりしながら、全5試合を延べ16投手による継投で頂点に。完投なしの優勝は5年ぶり6チーム目となった。

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