稲葉監督 誕生日に見えた劇的勝利の源 「結束」体現した東京五輪

 「全員で戦う」雰囲気の中、金メダルを獲得した稲葉ジャパン
 誕生日ケーキに笑顔を見せる稲葉監督(NPBエンタープライズ提供)
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 今夏の東京五輪で公式種目となって以降では初の金メダル獲得となった野球日本代表「侍ジャパン」。大会中に選手が催した稲葉篤紀監督(49)のサプライズでの誕生日祝いにも、チームの結束力の高さが垣間見られた。侍ジャパン担当の中田康博記者(45)が、その瞬間を振り返った。

  ◇  ◇

 今までに見たことのない光景、そしてチームの雰囲気だった。東京五輪期間中の8月3日に稲葉監督が49歳の誕生日を迎え、選手たちが祝福。「もうサプライズで、ちょっと涙が出てきた」と指揮官を喜ばせたその模様は、すぐに公式YouTubeへアップされた。

 五輪代表からは漏れたヤクルト・田口のビデオメッセージに「赤いパンツ」のプレゼント。阪神・青柳のバースデーソング熱唱で爆笑に包まれる食事会場。それら一つ一つに結束力を感じさせる要素が含まれていた。

 そこには長く代表を支えた広島・菊池涼や巨人・坂本の存在も大きい。例えば青柳だ。初戦のドミニカ共和国戦に続き、前日2日の米国戦でも打ち込まれていた状況。その青柳に歌うように促したのが菊池涼と坂本だ。

 「前日に僕が打たれて落ち込んでいたので。本当にキクさんや勇人さんの心遣いかなと。そういう役目をいただいたので全力でやろうという感じだった」と青柳は明かす。

 19年プレミア12の代表で東京五輪では選出されなかった田口も、菊池涼らとサプライズを企画した1人。グラウンドで結果を残せなくとも、代表に選ばれなくともチームに貢献する方法はある。誰一人として取り残されることなく全員で戦う。稲葉ジャパンの根幹を示した一場面だった。

 国を背負う重圧と緊張感、さらに悲壮感さえも漂う五輪野球。それがこれまでのイメージだった。短い期間で結束力を得るには、その空気が必要だったのかもしれない。ただ、代表が常設化されて長期間でのチーム作りをする上で、結束への要素は確実に変わった。

 「選手が迷わないように、こちらがしっかり準備をしていきたい」と繰り返した稲葉監督。代表に集まるのは一流選手ぞろい。彼らが力を出せる環境作りに注力する。代表を統率するため、導かれた一つの答えだった。

 それは07年の北京五輪予選以降、選手、コーチ、監督で長く日本代表に携わった稲葉監督だからたどり着いた答えかもしれない。

 選手らの笑顔や気配り、取り巻く空気感。劇的勝利を続けた強さの源を、指揮官の誕生日を祝う1シーンが映し出した。そして代表常設後、変わらずテーマに掲げられた「結束」を体現した東京五輪に、新たな時代の日本代表を見た思いがした。

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