変化する選手と指導者の関係性 プロ野球の名伯楽・内田順三氏が大切にしていたこと

 プロ野球の巨人、広島で37年間、指導者として尽力した内田順三氏(デイリースポーツ・ウェブ評論家)。教え子に多くのスター選手を輩出した名伯楽は、選手の能力をどう引き出していったのか。指導者と選手の関係性が時代ととともに変化する中、大切にしていたことを聞いた。

 ◇ ◇

 一番は選手を知り、自分を知らせ、近づくこと。いわゆるコミュニケーションを取ることだよね。手を上げたり、脅したりしてやらせるのではなく、「よし、やってやろうじゃないか」と思わせるのがコーチの仕事だ。

 そのために、私はスカウトのレポートを見て選手の経歴や家庭環境、性格を把握し、どう教えていくかを考えながらやっていた。例えば広島の鈴木誠也は大谷翔平や藤浪晋太郎と同世代だが、甲子園に出ていない。だから反骨心や負けん気が強く、その年の広島ドラフト1位である高橋大樹にも負けたくないという気持ちがにじみ出ていた。僕が打席内容などを注意すると、すごい目力で向かってくるような、そんな雰囲気があった。

 対象的に、巨人で言えば岡本和真はノホホンとしていてマイペースな性格。鈴木誠也のようにガンガンやらせるのではなく、遊びを作りながら指導した。吉川尚輝も強豪大学への入学をやめて中京学院大に進んだという経緯を聞いたから、時には見ないフリをすることもした。入ってきた時からカープの菊池涼介に匹敵する守備力があり、確実にレギュラーになる選手だとは思ったが体力もなかったから、練習に強弱をつける必要があった。

 それでも指導者は選手を引っ張り、行動させることも必要な時がある。プロ野球なら2軍、3軍は「作り、育てる、鍛える」場所。大事なのは、その練習に根拠があるかどうか。昔で言えば「水を飲むな」、「階段でうさぎ跳び」なんてことも強制させられていたけど、今は見直されている。

 アマチュアなら、今は丸刈りでも賛否がある時代。個人的には丸刈りだろうが、ユニホームのパンツがプロのように長いタイプだろうが問題ないと思うが、高校野球は公立や私立で違うし、伝統もある。ひとつの目標に向かわせるため、チームをまとめるために、何かを統一する必要があるのかどうか。そこはそのチームの指導者がどう考えるかだろう。

 ただ、十年一昔と言われ、指導者も変わり身を見せることも大事だ。ひとつひとつのことにメッセージ性を持ちながら、一緒に体を動かしてやっていくことが今も昔も変わらず大事なことではないかな。

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