オリックス【きょうは何の日】1995年、初優勝!イチロー祝砲
「西武2-8オリックス」(1995年9月19日、西武球場)
八回、イチローが放ったバックスクリーンへの一発が待ち望んだオリックスの優勝を告げる。神戸であれほど苦しんだ1勝。それが敵地・西武球場であっけないほど簡単に勝った。震災の年にその街では成し遂げられなかった栄光。121試合目、オリックスとしては初となる感動の優勝だった。
その輪に向かって思いっきり駆けた。イチローは全速力で駆けた。
夢見た瞬間に身を置く幸せを、今、かみしめる。優勝という最高の瞬間をやっとこの手につかみとった。
クライマックスが近づくにつれて体中が震えた。右翼の位置に立って、合間を見ては何度もストレッチを繰り返した。ストッキングをたくし上げる。それでも気持ちは落ち着かなかった。
八回、迷いなく振り切ったバットから力強い弾道は夜空を切り裂いてバックスクリーンへと飛び込んでいった。チームを引っ張ってきた男の24号ソロ。沸き上がるスタンド。見えただろうか。この興奮が、遠く離れた神戸に届いただろうか。
宮内オーナーの「今年は負けちゃいかんのです。勝つチームでないと」との号令で始まったシーズン。1月17日の阪神・淡路大震災はチームとは切っても切れないものとなった。
最高の盛り上がりで迎えた本拠地・神戸での6連戦でナインは優勝の重圧の前に金縛りにあった。ひとつ勝つことの難しさを文字通り痛感した。
だが、産みの苦しみを味わった分だけ喜びは大きい。
喜びもつらさも悔しさもグッと内に秘めるのがこの男のやり方だったが、こんなときくらいははしゃいでいい。1シーズンの厳しい戦いを経てその頬はげっそりとこけた。しかし、色白の頬は赤く染まり、汗がしたたり落ちる充実感を存分に味わった。
「ビタミン注射をぎゅーっとため込んで一気に出した感じですね」
子供のように飛び跳ねたイチローはそんな言葉で最高のときを表現した。
試合は先発・星野伸之が緩急自在の投球でレオ打線を封じ、六回途中まで2失点。そこから鈴木平、平井正史とつなぐ盤石のリレー。
打線は四回にトロイ・ニールの23号で勝ち越すと、五回は藤井康雄、ニールの適時打、六回以降も得点を積み重ねた。星野は11勝目を挙げた。
当日のスタメンは次の通り。
(8)イチロー
(7)田口 壮
(3)D・J
(9)藤井康雄
(4)小川博文
(D)トロイ・ニール
(5)馬場敏史
(2)中嶋 聡
(6)勝呂壽統
(P)星野伸之