【メジャースカウトの眼】明石商・中森と日本航空石川・嘉手苅の真逆の魅力
中止となった今春のセンバツ出場校32校が招待された「2020年甲子園高校野球交流試合」が開幕。ようやく聖地に戻ってきた球児たちに、プロも注視している。今回の交流戦では、日本で米大リーグのスカウトを20年以上務めるカンザスシティ・ロイヤルズの大屋博行国際スカウトが金の卵を分析。学年や進路にこだわらず、メジャーの視点で気になる素材を紹介する。
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明石商の中森君と日本航空石川の嘉手苅君は、完成度と未知数という真逆の魅力を持つ2人だ。中森君は1年からずっと大舞台で投げ続けており、いわばベテランの風格。試合をつくる責任感や落ち着きがあり、学年を追うごとに球速も上がっている。耐久性も高く、間違いなくいい投手になるだろう。
今年プロ志望なら外れ1位くらいには入るかと思うが、私は大学に行って大人の体になった4年後ならすぐにプロで活躍できると踏んでいる。
五角形のグラフで表せば、中森君はすべて高評価。言うべき点は何もないのだが、それゆえにまとまりすぎているようにも思う。一方、これからどうなるのか未知数なのが嘉手苅君だ。191センチ、106キロというどっしりとした体格。常時140キロ台前半と球は決して速くはないが、相手打線が打ちあぐねていたのは、身長や手足の長さ、腕の振りなどにより生まれる遠心力だろう。
スライダーやフォークという変化球は“塩こしょう”で味付けした程度で、まだ素材で投げている状態。だからこそ器の大きさに魅力を感じる。好対照の2人だが、スカウトからすればどちらもほしいと思わせる選手だ。