静岡・藤田、夢の甲子園実況へ貴重な経験
「選抜高校野球・2回戦、東海大相模8-1静岡」(29日、甲子園球場)
描いている目標が、より現実的になった。九回1死一塁。 静岡・藤田大和外野手(3年)は代打で初めて聖地の打席に立った。緊張はない。冷静にグラウンドを見渡した。公式戦初安打となる中前打を放つと、風景を脳裏に焼き付けた。
文系では野球部トップの成績で、東大進学を目指す秀才。「甲子園で実況するのが夢なんです」。アナウンサーを目指す上で貴重な経験を積んだ。
中学時代は、静岡大付島田中の軟式野球部に所属。野球よりも勉強に力を入れていたが、高校野球は大好きだった。「どっちでも一番になりたかった」。甲子園に近い県内屈指の進学校へ進んだ。
強豪での文武両道は、想像よりもきつかった。練習を終えて帰宅するのは午後10時半。「勉強しないと置いていかれる」。疲れていても必ず午前0時半まで机に向かう。全国模試は60位。勉強では結果を残してきた。
だが、野球では苦しんだ。昨秋の静岡大会以降はベンチ入りメンバーを外れて記録員。居残り練習で努力を重ね、今大会から再度ベンチ入りを果たした。
「実際に自分が立ったことで、人ごとではなく、経験として伝えられることがあると思う」。わずか1打席。それでも大きな財産となった。