新入札制度で“日米不平等”加速

 日本プロ野球選手会が、日米間で既にまとまっていた新ポスティングシステムの受け入れを決めた。今オフからの新制度適用が決定的になり、次は1億ドル(約99億2000万円)以上と予想される楽天・田中将大投手の米大リーグ移籍に耳目が移っていくだろう。

 しかし、それでいいのだろうか。新制度は、入札最高額を提示した米球団に独占交渉権が与えられる方式に変わりないが、日本球団に支払われる金額は入札額1位と2位の間に抑えられる。

 また契約が破談になったときは米球団に制裁金が科される条項が加わる。これは2010年に楽天・岩隈久志投手が入札したアスレチックスと、翌年に西武・中島裕之内野手がヤンキースとの契約が破談になったリスクを軽減すると思われるが、制裁金はなぜかMLBコミッショナー事務局に入る。

 選手会は「見直し案は日本球界にとってメリットがない」と主張していたが、新制度は日本にとって圧倒的に不利と言うしかない内容だ。もともと不平等協定だったが、さらに後退したと言ってもいいだろう。

 1998年に導入されたポスティングシステムについて、当時のNPB関係者が「選手にとっては奴隷契約ですよ」と苦渋の表情で話していたのを思い出す。米国で活躍するためにはチーム構成も含めたプレー環境が重要だが、日本選手には選ぶ権利がないことを指摘したものだ。その「奴隷契約」は、選手会の主張むなしく、新制度の下で続く。

 ポスティングシステムの成り立ちから言えば、それもやむを得ないのかもしれない。そもそもはMLB側の論理でつくられた制度だからだ。95年の野茂英雄、翌年の伊良部秀輝のメジャー移籍騒動に端を発し、MLB側はFA権がない日本選手を獲得するためのルール作りを欲した。

 制度導入の際に、MLB側が主眼を置いたのは、米全球団に当該日本選手を獲得する機会を均等に与えることだった。選手獲得資金を出せるかどうかは各球団の努力であり競争だが、その競争に参加するチャンスだけは平等に与えられるべき‐という米国らしい発想が「入札」という制度を生んだ。MLB目線でつくられた制度に日本選手への配慮がないのも当然だろう。

 日本選手会は導入当初時から「選手に球団を選ぶ権利がない」ことを問題視してきた。しかし日本球界もこの制度の恩恵を受けてきたことは否定できない。球団には多額な入札金が入った。選手もFA権取得前に“夢”を実現する制度として利用してきた側面は確かにある。破談や入札不成立、ヤクルト・青木宣親が入団テストされる“屈辱”もあったが、少なからずウイン・ウインの関係にはあった。今回の制度見直しも、入札金の高騰に危機感を覚えたMLB側が協定の破棄を申し入れたからで、日本側からアクションを起こしたわけではない。

 選手会の新制度受諾は、楽天・田中の移籍が目の前にあるからこその苦渋の決断だった。新制度の下で、有望選手を獲得できるMLBも、多額な金銭が入る楽天も、メジャーでプレーできる田中も、ウイン・ウインの関係になるならそれもいいだろう。ひいては日本で24勝無敗の投手を大リーグで見たいという日本ファンも含め、皆が“勝者”なら新制度も飲み込める。

 しかし“日米不平等協定”はますます加速した。選手会は「2年間限定」で新制度を受諾する意向を表明している。問題を認識しながら先送りにしてきたNPBは、選手会とともに、この2年間を有意義なものにしてほしい。

(デイリースポーツ・松森茂行)

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