阪神・原口 涙の引退セレモニー 今季最終戦で代打出場、九回まさか捕手も1打席交代「サダは全然悪くない」 

 「阪神6-2ヤクルト」(2日、甲子園球場)

 阪神・原口文仁内野手(33)はレギュラーシーズン最後の出場となり、試合後は引退セレモニーが行われた。

 「代打・原口」のコールに、温かい歓声と拍手が降り注いだ。最後まで、黄色く染まった甲子園が背中を押してくれた。七回2死一塁。「いつも通りでしたね」。普段と変わらず準備して打席に向かった。

 マウンドには帝京高の後輩・清水。粋な計らいだった。初球、147キロの直球をフルスイングして空振り。続く直球にも思い切ってバットを振ったがファウル。そして最後の直球も振った。心地よい快音とともに舞い上がった白球。あの時の光景と重なった。

 「打球の飛び方的に甲子園でサヨナラ打った時の弾道に似ていたので、一瞬そういう思いがよみがえりました」

 19年6月9日・日本ハム戦、同点の九回2死一、三塁。代打で放った中前打。大腸がんから復帰後初のサヨナラ打を思い出した。この日は中堅・岩田のグラブに収まったが、自分のスイングは貫いた。「小さい頃の『3球振って帰ってこい』っていう教えを思い出しました」。少年時代の記憶もよみがえった1打席だった。

 直球勝負してくれた後輩には帽子を取って感謝。ベンチに戻る背番号94に、原口コールが鳴りやまなかった。八回はそのまま一塁の守備に入ったが、九回は予想外の出番が訪れた。「キャッチャー・原口」。球場はどよめきと興奮に包まれる。21年9月19日・巨人戦以来の捕手出場。「点差が開いたら行くかもよ」とは言われていたが、自分でも予想外だった。

 ロッカーに眠っていた道具を掘り起こし、ミットは長坂のものを借りた。練習はしていない。体の記憶だけが頼りだった。同級生・岩貞とのバッテリー。内山に対し初球は見逃しとしたが、その後は四球に。「サダも本当にいろいろ急いで作ってくれたと思います。頑張ってくれたので、サダは全然悪くない」。かばう姿に原口の人柄がにじみ出た。ここで交代に。拍手と原口コールがまだ鳴りやまなかった。

 セレモニーのスピーチ後には家族に花束を手渡されると涙が止まらなかった。度重なるけが、育成落ち、大腸がん。いつでも支えてくれた家族に「本当にありがとう」と伝えた。場内一周では応援歌が鳴り響いた。「ここに立つ為に 鍛え抜いた日々よ 原口のすべて 魅せろ奮わせろ」-。「僕の野球人生を本当に表してると思う。最高の応援歌です」。原口は涙目で、くしゃっとした笑顔でそう表現した。

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