【とらものがたり・木浪聖也内野手編(1)】「恐怖の8番」花咲かせた初打席でのバント成功
18年ぶりのリーグ優勝、38年ぶりの日本一に貢献した虎戦士の野球人生に迫る新企画「とらものがたり」。大竹、村上に続く3人目は、木浪聖也内野手(29)が登場する。プロ5年目の今季は「恐怖の8番」として花を咲かせた。第1回は飛躍のターニングポイントとなった一球に迫る。
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運命を左右する打席だった。開幕2戦目の4月1日・DeNA戦(京セラ)。5-5で迎えた延長十回無死一塁だった。木浪は代打で今季初打席に立った。「最初のバントから。そこからだったから今年は」。入江の初球直球を転がして一犠打を決めた。
開幕遊撃を小幡に譲り、開幕1、2戦目はベンチスタート。岡田監督の信頼を積み重ねていくために、大事な初打席で役割を果たした。
「自分が出る場面っていうのは、ダイバン(代打で犠打が求められる場面)かなって。バントだけでもちゃんとできていたら試合にも使ってもらえると思っていた」
2022年オフの岡田監督就任から、18年度ドラフト同期入団の6歳年下と遊撃の座を争った。ともにアピールし、指揮官を悩ませた。
しかし、岡田監督が開幕を見据えて先発オーダーを固定するオープン戦ラスト3試合は、小幡が全3試合でスタメン。「本当に今年ダメだったら…とかいろんなことを考えていた」。背水の陣で今季に臨んだ木浪は、開幕スタメンを逃して気落ちした。
再び闘志に火を付けたのが近本の一言だった。「勝負は6月やから」。思い描いたスタートは切れなかったが、新人時代からレギュラーとして戦い続けている同期で同学年の戦友の言葉が支えとなった。
活路を見いだす武器として選んだバント練習も後々に生きた。「いつでもどんな球でも。いろんなピッチャーを想像して練習していた」。バントにフォーカスすることにより、打撃の感覚も研ぎ澄まされていった。
「バントがちゃんとできていたらバッティングも調子が上がるというか、いい状態がキープできると気付いた」。球をしっかり見ることを続けたことで、ミートポイントの確認やストライクとボールの見極めにも生きた。
2度目のスタメンとなった4月9日・ヤクルト戦(甲子園)で3安打の猛アピール。ここぞの一打席に備えた入念な準備が結実し、勢いのまま結果を残し続けて正遊撃手の座を奪取。飛躍への道を切り開いた。
◆木浪 聖也(きなみ・せいや)1994年6月15日生まれ、29歳。青森県出身。179センチ、81キロ。青森山田、亜大、ホンダを経て18年度ドラフト3位で阪神入団。23年は遊撃のレギュラーを勝ち取りリーグ優勝と日本一に貢献。ベストナインとゴールデングラブ賞に選出された。
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