「ＳＭＢＣ日本シリーズ２０２３、オリックス・バファローズ－阪神タイガース」（５日、京セラドーム大阪）

　３８年ぶりの日本一へ大一番のマウンドを託された阪神の青柳晃洋投手が、５回途中無失点と先発の責任をしっかりと果たした。

　絶対に負けられない一戦で開幕投手がマウンドで躍動した。初回からバックドア、フロントドアを駆使して両サイドを丁寧に攻めた。三回に２死一、二塁のピンチを背負った際には、紅林を内角ツーシームで詰まらせて一ゴロに仕留めた。

　四球を出しても笑みを浮かべて余裕を感じさせた右腕。直後にノイジーの３ランが飛び出すと満面の笑みを浮かべた。四回をきっちり抑えて主導権を引き寄せると、五回１死一、二塁のピンチでは中川圭をツーシームで左飛に仕留めた。

　ここで岡田監督がベンチを出て交代を告げたが、マウンドの青柳は笑顔でナインとグータッチ。「とにかくいい緊張感でした。長いイニングを投げるとかは考えず、目の前１人、１人を抑えることに集中して投げました。もちろんプレッシャーも感じていましたが、今日できる自分の仕事はできたと思います」と語り、先発の責任を見事に果たした。

　今季は開幕投手を託され、岡田阪神の船出を白星で飾った。だが過去２シーズンの蓄積疲労からか、本来の球威が影を潜めた。コースを狙うあまり、四球が増えた。そこからピンチを広げ、痛打される悪循環にはまった。

　２年連続最多勝の右腕がまさかの２軍調整を強いられた。それでも腐ることなく、ウエスタンのゲームで登板を重ねて復調を目指した。後半戦から復帰すると勝ち星を重ねたが、シーズン終盤に再び打ち込まれ、ポストシーズンでの登板序列は落ちた。

　それでも準備を続け、岡田監督が「投げられるから良かったやん」と語って託した大一番のマウンド。２番手の島本がピンチを切り抜けると、ベンチで満面の笑みを浮かべて出迎えた。苦しみぬいた右腕が見事に重責を果たした。