岡田氏は駆け引きを得意とする戦略家 阪神次期監督就任後は〝勝てる試合を確実に勝ちにいく〟
阪神第35代監督に岡田彰布氏(64)の就任が内定した。オリックス監督時代の2012年は担当記者として密着し、16年と今年はデイリースポーツ評論家の岡田氏に付いたデイリースポーツプロ野球デスクの西岡誠(41)が『岡田の心』と題し、18年ぶりのリーグ優勝を狙う来季の岡田野球を全4回で占う。最終回は「采配」編。
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今季、阪神が優勝を逃した一因は得点力不足だった。近本、中野が最多安打を争い、大山と佐藤輝はともに80打点以上を記録。にもかかわらず、球団ワーストを更新する26度の零敗を喫した。
岡田政権で課題克服のポイントとなるのが、送りバントだと感じている。岡田氏は今季の阪神に「極端に言えば、ヒット4本続かんと点が入らん。打てば勝つ、打たなければ負ける」と戦略を立てる必要性を口にしていた。
「今季のような状態なら」という前提で、提言した打開策の一つが送りバントだった。「得点圏に進めれば何かが起きる可能性があるし、ノーヒットでも点は取れるんやから」。安打が出なくても得点へつなげる形を作る重要性を説いていた。
さらに「阪神は本拠地の甲子園が広いからな。バントは大事やで」とも話している。来季はどのように犠打を織り交ぜてくるのか。
強力打線を擁して優勝した2005年はリーグ4位の85犠打。特に初回や試合序盤の相手が苦しんでいる状況で、無死一塁から簡単に送りバントをさせた印象は薄い。
来季は1番に近本を据え、中軸で佐藤輝、大山を固定する見込み。「バントをするかは状況による」と話しており、新打線が機能して得点力がアップすれば、より効果的に送りバントを使うだろう。
岡田氏は先を読み、駆け引きを得意とする戦略家。「監督は最悪を想定して、何が起きても対応できるように準備せんとあかん」と言う。事前に対戦歴や相手の現状など、あらゆる情報をインプット。策には必ず根拠を持ち、「相手が嫌がる作戦」を講じていく。
流れも重視する。8月3日・巨人戦(東京ド)。阪神は1点リードの七回に先頭の6番・糸原が出塁後、ベンチは代走・熊谷を起用。1死一塁から前打席でソロを放った梅野を打たせた。結果は遊ゴロで併殺(二塁アウトはボナファイドルール適用)。その直後、先発・伊藤将に代えて浜地を登板させた。
岡田氏は「9番まで回せば八回の攻撃は1番からやし、投手も代える予定やったんやろ?なら、七回は0点で終わってもええんよ。梅野がタイミングが合ってるとかは関係ないし、ゲッツーを打たせないためにバントでええんよ。まず9番まで回すことを考えんと」。この場面は一例。常に流れを引き寄せるきっかけを探っている。
同氏が何度も口にする言葉がある。「勝負に『あわよくば』はない」。「最善を尽くしたのか」。采配で欲を出さず、勝てる試合は確実に勝ちにいく。シーズン中、監督の采配が勝敗を左右するのは数試合と言われる。岡田氏は厳しい展開でこそ、真価を発揮するはずだ。=終わり=
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