「巨人１－８阪神」（１日、東京ドーム）

　５月反攻を目指す阪神にイキのいい右腕が名乗りを上げた。３年目の西純矢投手（２０）だ。今季初登板初先発し、１５０キロ超えの剛球連発。高速フォークも駆使して巨人打線を７回３安打８奪三振、１失点に抑え、昨年５月以来となるプロ２勝目を挙げた。チームも東京ドームでは９年ぶりとなる巨人３タテに成功、連勝も６に伸ばした。破竹の快進撃はまだまだ止まらんで！！

　何度も何度も、拳を握りしめた。無邪気に笑い、白い歯をこぼした。高校時代と同じように。それでいて、ぐっと大人びた姿で。西純が３年目の進化を見せた。

　「ブルペンでは結構荒れてて、どうなるかなと思っていたんですけど。マウンドに行ったらリラックスして、ずっとやってきたことが出せたと思います」

　初の伝統の一戦も楽しんだ。初回２死二塁。岡本和に対し、カウント３－１から１０度、首を振った。投じたのはこの日最速１５３キロの高め直球。豪快な空振りを奪うと、場内がどよめいた。四球を与えて２死一、二塁となったが、続く丸も１５０キロ超えの直球連発で押し込み、最後は１４６キロフォークで空振り三振に斬ると、「ヨッシャー」とガッツポーズ。高校時代、聖地のマウンドで話題となった“トレードマーク”で感情を爆発させた。

　二回にウォーカーに先制ソロをプロ初被弾したものの、以降は無失点。四回無死から１１人連続アウトなどプロ最長７回を８奪三振の３安打１失点と圧巻だった。初勝利を挙げた昨年５月１９日・ヤクルト戦（甲子園）以来となるプロ２勝目。五回１死の打席では遊撃内野安打を放ち、プロ初安打のおまけ付きだ。

　ウイニングボールは、球場を訪れていた母・美江さんに手渡すつもり。「見に来るとき、なかなか良いピッチングができないんですけど、今日だけはよくやったかな」と照れくさそうにはにかんだ。

　入団以降フォームを模索してきた中で、昨秋からは高校時代の形に近い、腕の振りをコンパクトにしたフォームに変更。試行錯誤する中でトップの位置が安定し、制球力の向上につながった。実際にこの日は１四球のみ。矢野監督も「これからの試合が本当に楽しみなピッチング」と評価。コロナ禍など先発陣のアクシデントが続いた中での登板だったが、次戦についても「もちろん、外す理由がない」と明言した。

　苦悩の中でつかみ取った１勝だ。史上最年少で完全試合を達成したロッテ・佐々木朗を筆頭に、同世代の活躍はいや応なく目にする。比較されることもある中、「歯がゆい日々が続いていた」と吐露。それでも、そんな日々を原動力に変えた。「今年は本当にやるぞっていう気持ちで。最終的には１番になれたら」。チーム内でも、同じ高卒のドラフト１位として森木と比べられることが多かったが「森木と勝負したって１軍で活躍できるわけじゃない」と自分と向き合い続けた。

　「もっともっと勝っていって、ここから巻き返していきたい」。チームの６連勝を導いた右腕が、さらなる勢いを呼び込む。

　◆西　純矢（にし・じゅんや）２００１年９月１３日生まれ、２０歳。広島県出身。１８４センチ、９０キロ。右投げ右打ち。投手。創志学園から１９年度ドラフト１位で阪神入団。プロ２年目の２１年５月１９日・ヤクルト戦（甲子園）で初登板初先発。今季ウエスタンは３試合で２敗、防御率１・４５。