「セＣＳファーストＳ・第１戦、阪神０－４巨人」（６日、甲子園球場）

　「２０２１　ＪＥＲＡ　クライマックスシリーズ　セ」が開幕し、２位からの日本一を目指す阪神は巨人に完封負けを喫した。巨人・菅野に圧倒されるだけでなく、ヒットエンドランを見抜かれ、継投も失敗するなど、矢野燿大監督（５２）が採った作戦はことごとく不発に終わった。第２戦で敗れれば終戦を迎える猛虎。逆転ファイナルＳ進出へ、もう負けるわけにはいかない。

　九回２死満塁。代打の切り札・原口が登場すると、甲子園はこの日一番の盛り上がりを見せた。だが、強烈なライナーは無情にも三塁手・広岡のグラブに収まる。その瞬間、今年最多２万１４７８人が詰め掛けた場内は一気に意気消沈した。

　頼みの高橋が五回に１点の先制点を許す中、巨人先発・菅野を攻略できなかった。痛恨は先頭のマルテがチーム初安打で出塁したその五回だ。続く糸原の打席。１ボールからの２球目にマルテがスタートを切る。マルテの足を考えれば、サインはおそらくエンドラン。これを巨人バッテリーに完全に読まれた。

　捕手・小林が立ち上がって大きく外し、ウエストボールを要求すると、糸原はバットを振ることさえできない。マルテは二塁で憤死。一気に好機がしぼんだ。「あれを外すっていうことは何か根拠が、かなり高い確率でなければ外せないと思う」と矢野監督は首をかしげた。

　その後も０行進が続き、屈辱の完封負け。前日には「今年の菅野はすごい嫌かと言われればそんなことはない」と自信をのぞかせ、スタメンに７人の左打者を並べたが…。宿敵のエースに７回２安打と抑え込まれ、「前半から飛ばして球の力はあるなっていう感じはちょっと違ったところかな」と唇をかんだ。

　対照的に巨人、五回の先制点は、無死一塁から５番・ウィーラーが送りバントを決めたところから生まれた。そして六回、八回の追加点はそのウィーラーの適時打。特に八回は２死一、三塁のピンチを招いた及川を続投させて点を奪われた。直後に右の小林に継投したが、結果的にワンテンポ遅かった感がある。

　阪神がＣＳ初戦を落とした過去５度は、すべてそのままファーストＳで敗退。セ・リーグで初戦黒星からの突破は０９年・中日と１７年・ＤｅＮＡの２度だけで、その突破率は１５・４％しかない。

　「負ければ終わり。勝って次にどう持ち込むか。それだけを考えてやっていきたい」と矢野監督。九回２死から見せた粘りは、必ず第２戦へとつながる。簡単に下克上は許さない。矢野阪神の２０２１年を終わらせない。

　◆突破率０％　阪神のＣＳファーストＳ初戦敗戦は２００７・０８・１０・１３・１５年に次いで、６年ぶり６度目。過去５度はすべてファーストＳ敗退で、初戦●からファイナルＳに進出したことはない。セ・リーグ全体で見ても、初戦●からの突破は０９年・中日と１７年・ＤｅＮＡの２度だけ。