阪神・糸井V撃 キメる男!虎トップ3本目 375日ぶりお立ち台、声援「心強い」
「阪神6-3ヤクルト」(14日、甲子園球場)
耳に届く声援が力に変わった。勝ちたい、勝ちを届けたい。阪神・糸井のフルスイングに、新たなスパイスが加わった。逆転の口火を切る二塁打に、勝敗を分けた勝ち越しの適時打。2本の安打が欠かせなかった。今季の勝利打点はチームトップの「3」。殊勲の活躍だ。
「チャンスを作ってくれたので。なんとか走者をかえせるように頑張りました」。少し紅潮した顔で振り返ったのは五回の攻撃だ。四回に3点を取って逆転したが、五回、西田にソロ本塁打を浴びた。再び同点とされた直後。近本、糸原で一、三塁の絶好機を作った。
後輩の演出を無駄にはしない。2球目、カットボールを狙った。左投手に対してお手本のように逆らわず、狙い澄ました打球が三遊間を抜ける。試合の流れが行き来する中、勝利を手繰り寄せる一打に球場も湧いた。四回にも左翼線を破る二塁打。3戦連続安打でチームに勢いを生んだ。
「まだ納得はしていない。勝ちにつながるような一打が打てるように練習を励んでいます」。本拠地では試合直前に室内で、マシンに向き合うことも珍しくない。試合後もバットを振るのが日課。39歳を迎えるシーズンも、衰えぬ向上心が「超人」の異名を支える。
守備に就く際、アルプスを見上げる。球場に観客は戻ってきたが、まだここは封鎖されたままだ。小学生のころ父に連れられ、初めて足を踏み入れる。アルプスで見たのは真弓明信の本塁打。いまでもふと立ち止まった時、「俺の原点」という場所に立つ。またファンで埋め尽くされる日を信じて戦っている。
「まだ借金もあるので。もちろん1位を目指して、一日、一日、頑張りたいと思います」。昨年7月5日の広島戦以来、375日ぶりにお立ち台にも立った。まだ空席が目立つスタンド。声援は小さくても「心強い」と感謝する。アルプス席から夢をかなえた男。逆襲はここから始まる。
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