【虎戦士回顧録、あの時は…】山口高志氏 2014年ブルペンを支えた投手コーチ

 阪神が近年で最も日本一に近づいたのが2014年。レギュラーシーズンは2位だったが、3位・広島とのCSファーストSを1勝1分けで突破すると、ファイナルSでは巨人に4連勝を飾り、日本シリーズへ進出した。当時1軍投手コーチとしてブルペンを支え、現在は母校・関大野球部でアドバイザリースタッフを務める山口高志氏(69)が、下克上の要因と中継ぎ陣の秘話を明かした。

  ◇  ◇

 桜満開の関大千里山キャンパスで、山口氏は懐かしそうに当時を振り返った。「思わず巨人に勝って、ソフトバンクに先に1勝して…いい夢を見させてもらったなあ」。阪神が最後に日本シリーズに進出したのは6年前。山口氏は遠くを見る目で記憶をたどった。

 神がかり的な連勝は台風接近前の甲子園から始まった。CSファーストSの相手は2年連続で広島。前年は不覚を取ったが、初戦を1-0で競り勝つと、2戦目は延長12回を戦い抜き、0-0のドローで突破を決めた。

 「前年、広島に負けたから、今年は負けないぞ!というのはあったんちゃう。勢い付けたのは当たり前のことやけど、うちは2位やろう。下は見てない。上を見て戦うから」

 舞台が敵地に移っても猛虎は突っ走った。巨人とのファイナルS。初戦の先発を託されたのは高卒2年目の藤浪だった。同年の巨人戦は未勝利。8月は2戦2敗を喫していたが、大一番でリベンジした。7回1失点の快投で1勝1敗のタイに戻すと、2戦目以降の岩田、メッセンジャー、能見も続き、先発陣が役割を果たした。

 「みんなが持ってる力を出してくれたね。一つ目の藤浪の力が大きかった。ビハインドが消えるんやから。若手が頑張ってくれると勢いがつく。後押ししてくれる要因になった」

 中継ぎ陣の充実も見逃せない。セットアッパーの福原、守護神・呉昇桓。山口氏が強調したのは、安藤のフル回転と“阿部キラー”として名をはせた高宮の奮闘だ。

 「高宮が戦力になってくれたのは思わぬ産物。活躍はうれしかった。安ちゃんも便利屋で耐えてくれた。“JFK”みたいな外面的な強さはなかったけど、個々が頑張ってくれて一つの塊となった」

 1983年の阪急から数えて、投手コーチ歴25年。名伯楽には一つの信念がある。「オレの仕事は選手を気持ち良くマウンドに上げること」。オリックス時代のまな弟子・鈴木平はブルペンの雰囲気を「ピクニック気分」と語っていたという。

 「極端な言い方をしたら、そのムードにオレは命かけてたもん。見ず知らずの人が見たらおかしいやろって、緩んだ雰囲気やったやろな。(出番まで)2時間も緊張感が続くわけないから。順番が近づいてきたら目覚めていく、爆発するように」

 CS6試合を戦って、中継ぎの失点は6戦目に呉昇桓が失った2点だけ。CSMVPに輝いた守護神は「リリーフの無失点が続いていたのに、最後に自分が失点してしまい申し訳ない」とわびたという。ブルペン陣の結束を物語る話だが、山口氏は「覚えてないなあ。ハッハッハ!」と豪快に笑った。

 「あそこにおるのがドラフト候補のピッチャー」。今もブルペンが山口氏の居場所だ。古希を来月に控えても、レジェンドからは情熱がほとばしっていた。

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