陽川完璧弾 バレぼう然!左翼席上段へ6月3本目 九回チャンスも惜っし~左飛
「ヤクルト10-9阪神」(29日、神宮球場)
大歓声の中で、打球はもうひと伸び足りなかった。三度目の逆転かと思われた阪神・陽川の大飛球。だが、無情にも左翼のグラブに収まった。「明日もあるので、また切り替えて頑張りたい」。序盤に放った試合を大きく動かす3ラン。それでも勝利に結びつかなかった空砲を前に、言葉を懸命に前へと向けた。
5試合連続の「5番・一塁」での先発出場。やはり勝負どころでクリーンアップに打席が回ってきた。三回の第2打席。2死一、二塁の場面で、静かに打席へと向かった。「なんとか後ろにつなごうという意識でした」と一打集中。1ボールから3球ファウルで粘り、5球目の130キロのツーシームを力強いフルスイングで捉えた。
打った瞬間だった。虎党も両手を挙げて立ち上がる。左翼・バレンティンは一歩も動かない。完璧すぎる一発だ。左翼スタンド上段に突き刺す第3号のアーチを描くと、「感触はよかったです」と少し頬を緩めた。
追い込まれてからの一撃だった。ファウルで粘り、つないだ一本。「あっさり終わらないこのような打席を増やしていきたいです」。その意識は、状態を着実に向上させている。18試合に出場し、打率・359。大ブレークの序章なのか。だが、これだけ打っても危機感は募っていた。
試合を決める一撃を放っても、クリーンアップの一角に座っても常々口にする不安。「スタメンで出ても、結果を残さないと次がないと思っている」。続けることの難しさは知っていた。これまでも何度も行き来した1軍と2軍。その思いは常に胸の中にある。
だからこそ悔やんだ。九回、点差は1点。2死一、二塁で回ってきた同じような場面。3ランでチームを救う“再現”とはいかなかった。逆転を許した敗戦は忘れない。この屈辱を忘れない。
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