【狩野目線】カーブを勝負球に 開幕星引き寄せたメッセと梅野の勇気ある1球

 デイリースポーツ評論家の狩野恵輔氏が、独自の視点からプレーを分析する「狩野目線」。今回は開幕戦で試合展開を変えた梅野のリードにスポットを当てます。初回、いきなり陽岱鋼に痛打されたカーブを消さず、先制点が許されない場面でゲレーロへの勝負球に選択。見逃し三振に仕留めた1球になっただけでなく、相手打線に与えた“残像”が開幕戦勝利を呼び込んだ。

  ◇  ◇

 僕の視点ではゲレーロから見逃し三振を奪ったあのカーブが、開幕戦のすう勢を決めたと考えています。最高の場面で最高のボールを消さずに使った梅野のリード。そして、最高のコースに投げ切ったランディの技術と精神力。バッテリーの感覚が一致した1球だったと思います。

 立ち上がり、先頭の陽岱鋼に投じた2球目のカーブを中前に痛打されました。独特の緊張感が漂う敵地での開幕戦で、先制点を奪われることは絶対に避けなければなりません。状況は進んで1死一、二塁で4番・ゲレーロ。リードを見ていると、簡単に追い込みましたが、インハイの直球をファウルされて、スプリットも見極められ、ファウルで逃げられてという状況でした。

 6球目、梅野には何を投げさせようか多少の迷いもあったと思います。その中でいきなり打たれたカーブで決めに行った。打たれたボールで行くのは捕手として、すごく勇気がいることです。もし、再び打たれたら「こいつ、何してんねん」というふうに周りからも言われる。すごく重圧がかかる選択だったと思いますが、見逃し三振という最高の結果だけでなく“残像”を植え付けることもできました。

 現役時代に僕が捕手として言われたことが「1球で印象づける」ということ。まだ若手の時、矢野さんと安藤さんがバッテリーを組んだ試合がありました。プレーボール直後の初球、2球目といきなりシュートで相手の懐を突いた。このシュート、シュートという特異な配球を、相手のベンチや選手は間違いなく見ています。

 あえてシュートを続けたことで、打席に立つと「いつかシュートがくるんじゃないか」という考えが生まれる。立ち上がりの残像があるから、外角に踏み込むことができない。結果的にその試合は、外角中心の配球で勝ち切ったことをすごく覚えています。

 開幕戦もいきなりカーブを打たれました。でも、そのカーブを戻してゲレーロを見逃し三振に仕留めた。相手はカウント球のカーブではなく、勝負球のカーブがあると認識したと思います。その時点から直球に差されて、カーブの割合も増えた。ランディの直球の球速も尻上がりに増してきたことで、中盤以降はカーブと直球のコンビネーションにタイミングが合わなくなった。

 もし、序盤でカーブを消していたら、ランディも7回を投げられていなかっただろうと思います。130~140キロの球種が多い中で、緩いカーブは組み立ての中で絶対に外せないボールです。約30キロの球速差があるから、相手も一つのタイミングで打ちにいけなくなります。

 梅野が勇気を持って選択したカーブ。まさに試合を作った1球だったと思います。

関連ニュース

編集者のオススメ記事

タイガース最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング(タイガース)

    話題の写真ランキング

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス