2~5番の打“線”が金本阪神好調の要因 セイバーメトリクスで分析

 「セイバーメトリクスで占う鳥越規央の傾向と対策」

 セイバーメトリクス(野球統計学)の第一人者・鳥越規央博士が、昨季に続いて今季も金本阪神の戦いぶりをデータに基づいて徹底チェックします。意外な視点、納得の解析-。統計学者の「傾向と対策」をどうぞお楽しみください。

 5カード13試合を終えて8勝5敗の阪神。昨季の13試合消化時点では8勝4敗1分けだったので、ほぼ同じペースです。しかし昨季とは違う様相を呈しています。

 まずは打線。昨季開幕時の2番は横田、3番はヘイグでしたが、両者とも成績が振るわずスタメン落ち。その後も2、3番の出塁率が3割1分台と伸び悩み、4、5番の前に走者がたまらず、慢性的な得点力不足に悩むことになりました。

 しかし今季の2、3番はリーグ随一の打力を誇っています。特に上本は積極的な打撃かつボールの見極めの良さで、14日まではOPSが0・9を超える活躍でした。16日に2番に入った高山も2安打。八回の安打出塁が決勝点につながるなど、結果を残しました。

 そして今季から加入の3番・糸井がOPS・952と絶好調。得点圏打率・500という勝負強さも発揮しています。4番・福留、5番・原口のOPSも0・8超で、2~5番までがまさに打“線”を紡いでいるのです。その結果、初回の得点確率や平均得点はリーグ2位で、優位なゲーム展開が形成できています。

 MLBではチームの主軸を2、3、4番に配置する打線が組まれることが多くなりました。日本でも15年にヤクルトが2番・川端、3番・山田、4番・畠山のオーダーを組み、リーグ最多得点を記録した実績があります。また、今年の楽天の1番・茂木、2番・ペゲーロは両者ともOPSが1超で、8、9番で作った好機を確実に得点につなげています。阪神も1番打者の出塁率が上がってくれば、得点力増加がさらに期待できるでしょう。

 投手のデータを昨季同時期と比較すると、先発投手のQSが昨季は10回、76・9%だったのに対し、今年は4回、30・8%しかありません。しかし、救援陣の防御率2・03はリーグトップです。今季、阪神が先制した時の勝敗は7勝1敗。先制し、先発が打たれて同点もしくは逆転を許しながらも救援陣が踏ん張り、終盤に勝ち越す傾向にあります。

 ちなみにQSは悪化していますが、FIPはリーグ2位で昨季の水準と変わりません。ということは、首位浮上の鍵は守備力の向上ということになるでしょう。(統計学者)

 ※OPS 出塁率+長打率。数値が.834を超えると「非常に良い」の評価。

 ※QS率 先発投手が6回以上を投げて自責点3以内に抑えた確率。

 ※FIP 奪三振、与四死球、被本塁打という明らかに投手の責任だと考えられる数値をもとに出した「投手力」の指標。

  ◇  ◇

 鳥越規央(とりごえ・のりお) 統計学者。大分県中津市出身。野球統計学(セイバーメトリクス)を駆使した著書は『本当は強い阪神タイガース』(筑摩書房)『勝てる野球の統計学』(岩波書店)など多数。所属学会はアメリカ野球学会、日本統計学会など。日本セイバーメトリクス協会会長。

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