坂井オーナー直撃インタビュー「金本監督一人に仁王立ちさせない」

 阪神・坂井信也オーナー(68)=阪神電鉄会長=が大阪市内の電鉄本社でデイリースポーツのインタビューに応じ、2年目を迎える金本知憲監督(48)への期待感、巨人の大補強、今秋のドラフト戦略など多岐にわたり、胸の内を語った。全幅の信頼を置く金本監督とは一蓮托生(いちれんたくしょう)の思いを強調し、巨人に負けない、フロント&現場の強固な団結を約束した。

  ◇  ◇

 -昨年1月のインタビューで、坂井オーナーは「組織には怖い人が必要」と話していた。昨季、金本監督はロッカールームで選手を叱責(しっせき)し、鬼になることもあったと聞く。新監督の「怖さ」はどのように映っていたのか。

 「1年目だから少し遠慮しているのかな、と。どういうふうに怒っていいのか、どういうふうに褒めていいのか、躊躇(ちゅうちょ)があったのかもしれない。もともと自分の怖さの出し方、キャラクターがあるでしょうから試行錯誤だったのでしょう。実績があるし、現役時代から自分を追い込んできた人。言葉に重みがあるということは事実ですし、組織が緩んだ空気になることはないでしょう。怖さにもいろいろあります。しゃべらない怖さ、怒鳴る怖さ、手をあげる怖さ。前任の監督たちは少し温厚なイメージがありましたので選手の間でも少し甘えというかエクスキューズが通用するようなところがあったかもしれませんが、金本監督には通用しない。ちょっと痛いからやめておきますとは言いづらいし、中途半端なことをしていたら使ってもらえないという無言の怖さもある。こちらからこんな怖さを出してほしいというものはないですし、今まで通りやってもらえばいいと思っています」

 -監督の手腕が問われる2年目。金本監督は常々、野球観を大切にしたいと言ってきた。思いきった采配、用兵を期待する声も多い。

 「金本監督らしく思いきったことをやってもらえばいい。失敗したら、また元に戻せばいいと思います。どうしても守りに入ってしまうと、これをやればこんなリスクがあるとなり、できなくなる。昨年は、打順にしても百何十通りあるとかマスコミの批判みたいなものもありましたけど、構わないと思いますし、『もっと何通りもあるぞ』というくらいになってくると、金本監督らしくなってくると思っています」

 -巨人が巨大補強した。史上初めて同一年度にFAで3選手を獲り、外国人も4番、抑え候補を獲得。トレードも積極的に行った。ウン十億とも言われる大金をかけ、戦力に厚みを持たせた。

 「個々の選手がどうこうというのはないですが、老川オーナー、堤GM、高橋由伸監督がチームを強くしたい、優勝したいという意思がひとつになって、とにかくやれることをやろうじゃないか、多少の批判はあるだろうけど、それは自分たちが受け止める、というふうに感じます。最大限の努力をしようという一致した力を感じますので、チームとして本気だな、さすが巨人だなという思いはある。世間では、手当たり次第との見方もあるかもしれませんが、われわれとしては恐ろしいなと思います。球団によってチームを強くするやり方は違います。広島や日本ハム、DeNAとは違う、巨人は巨人なりの方向性がある。そういう意味では、巨人の団結力というものは参考にしないといけないとは感じています」

 -阪神の補強についてはどんな評価をしているのか。今季「絶対優勝」を掲げるならば、やや不安を残してスタートする感はある。

 「補強については100点満点かと言われるとね…。ただいろんな制約もありましたが、FA、ドラフトはほぼ思った内容のものができたとは思っています。どこを満点にするかという問題はあります。投手陣も打撃陣もまだ足りないと言われたら、どちらも足りないかもしれないですが、現状を踏まえたときに、やはり攻撃陣が劣っていましたから、そこの補強に重きを置きました。相対的に投手陣のほう(補強)に力が入っていなかったと言われれば、そうかもしれません。どちらかというと攻撃陣を底上げし、オフェンスの不足部分をカバーしていくことをテーマにしていましたので」

 -ドラフトでは12球団で唯一、1巡目で野手を指名した。

 「投手、野手、両方獲れたら良かったのでしょうけど、ドラフト戦略上、情報として2位で狙うと野手(大山)を獲れない可能性が高かった。野手の充実がテーマでしたから、両方逃すリスクを避けて野手を確保したかった。攻撃陣の充実化を目指すということがチーム方針に合うということで金本監督もそういう思いでしたし、私も了承しました」

 -ドラフト直後、金本監督は今秋のドラフトも頭にあったと言っていた。超目玉とも言える早実の清宮幸太郎についてはどんな見方をしているのか。

 「清宮くんの力というのは、松井さん、清原さんに等しいものがある。何年かに一人の逸材だと考えてドラフトに臨まないといけないと思っています。監督とはまだ話をしていないですし、清宮くんが大学へ進むかもしれないので、この場で『1位にします』とは宣言できないですが(笑)、当然、検討していかないといけない。将来的にクリーンアップに2人ほど生え抜きの選手を据えようと思うならば、3年、4年続けて野手を1位指名するドラフトにしても不足するものではないと思います。チーム編成上そうはいかないこともありますが、今秋のドラフトでまた野手を1位指名したとしても過剰に野手を補強していることにはならないと思っています」

 -阪神は監督を務めるには一番難しい球団とも言われる。オーナー自身、巨人がそうであると言うように、フロント、現場の団結力が望まれる。

 「巨人もそうですが、少しの間は勝てませんよという期間があまり許されないですよね。お客さんあってのものですから、1年ダメなら来年は優勝しないといけない雰囲気になりますし、それに応えないといけない。3年くらい待ってくださいというわけにはいかない。3年くらい低迷しても待っていると言っていただいても、1年たてば『なんで勝てないの』となるのがこのチーム。ある意味そういう要望をもらえるのは球団としてうれしいことです。田んぼでも良い作物を作ろうと思えば1、2年くらい休田して土壌を変えてやれば見事に育ったということになるけど、結局収穫がなかったということにはできないし、ジレンマはありますよ。いろんなことを認識しながら戦っていかないといけないチームですけど、そういう難しいことを背負いながらやるのも幸せなこと。若手を使って何がいけないのかという金本監督の強さにわれわれも頼っているというか、弱い監督なら身が持たないような試練を金本監督に背負ってもらっています。そういう意味でも昨年1年間は本当によくやってくれました。今年はわれわれも金本監督一人に仁王立ちさせないようにしたいと思っていますよ」

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