福留、雪祭り遠のく2000安打

 「広島4-2阪神」(25日、マツダスタジアム)

 阪神・福留孝介外野手(39)が、広島戦の六回、岡田から二塁内野安打を放って日本選手6人目の日米通算2000安打を達成した。

  ◇  ◇

 福留孝介が教えてくれた。「風さん、球場に鷹が飛んでいるの、知らないでしょ」。甲子園が僕の職場になって15年以上になるが、そんな明媚(めいび)な光景にお目に掛かったことはなかった。「朝、いるんですよ、本当に」。先日の札幌遠征で聞いたものだから、帰って確かめたくなった。

 福岡の鷹が甲子園で強烈な爪痕を残した17日からの3連戦。その2戦目、早起きをして甲子園に向かって見ると、確かにいた。7時過ぎ。聖地の梅雨空に鷹が飛んでいる…。前夜、サヨナラ打で無敵の鷹を粉砕した福留の姿も確かに、そこにあった。同日は午後2時開始のデーゲーム。だからプレーボールの7時間前、39歳は誰もいない外野ポール間を汗だくになって走っていた。

 甲子園のスタンドを荒らす害鳥の駆除が必要なとき、鷹匠が早朝に出動する。彼らの任務終了は8時ごろ。鷹が羽を収めるとほぼ同時に福留はランニングを終える。阪神で鷹を見たことのある選手は、僕の取材の限りでは3人。そのうちの1人、岡崎は言う。「僕はだいたい7時半から走りますけど、孝介さんと鳥谷さんは、もうグラウンドにいます」

 昨秋、青木宣親から聞いた。「福留さんの練習量はすごい」と。青木と福留はマネジメント会社(吉本興業)が同じで親交がある。「今年2000本でしょ。まだまだいける」。メジャーの先輩への敬意があふれていたワケは、福留を追い掛けてみるとよく分かる。

 僕が初めて福留を取材したのは、彼がPL学園の野球部寮を退寮した1995年の12月15日。「そうでしたっけ?懐かしいな…」。PLへの進学が決まった93年春、鹿児島の野球少年は学園から指定された「寮への持ち込み品」を見て驚いたという。洗濯石けんと洗濯板-。1年秋から4番を担った怪物は夜な夜な練習着の泥をゴシゴシやりながら、プロを夢見ていた。

 夏の高校野球、大阪大会の本塁打記録は清原和博でも中田翔でもなく、福留。彼の1大会7本塁打は今も最多記録として破られていない。金本知憲はこの日、注文をつけた。偉業到達のめでたい日に「孝介は本塁打をもう少し…。普通のキャリアを積んできた選手ではないから」。

 札幌遠征で鷹の話ともうひとつ、福留から素敵な話を聞いた。「いつか現役を引退したら、2月に札幌に来たい。雪祭りを見たいんですよ」。プロ野球選手は2月のバカンスがかなわない。だから、「夢だよな」と言う。でも、大台を「通過点」とする、その勇ましい羽を休めるのは当分先になりそう…。=敬称略=(阪神担当キャップ・吉田 風)

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