良太「申し訳ない」失点招く痛恨失策
「ヤクルト2‐0阪神」(31日、神宮)
すまん、晋ちゃん…。試合後、三塁側スタンドの前を歩く阪神・良太を大勢の報道陣が囲んだ。発言を求められるまでもない。唇を噛(か)んだ良太の顔が、そう言っていた。
「先頭の、最初のバッターでああいうことをしてしまって…。申し訳ない」
黄金新人の立ち上がり。思いも寄らぬ落とし穴が待っていた。2球目。148キロ、高めの速球で打ち取った打球は一塁へのゴロに。何でもない打球に映ったが、丁寧にバウンドを合わせた良太がファンブル。結果的にこの失策が失点を招いた。
まだ開幕3戦目。それでも、この一戦が単なる144分の1でないことは、良太もチームも、プロ野球ファンも共有していた。和田監督は「(藤浪)本人よりも、周りが硬くなっていたね」と振り返った。
良太は「(藤浪に限らず)ほかのピッチャーと同じこと。とにかく先頭でやってはダメ…」と過剰な意識を否定したが、チーム一のムードメーカーでさえ、球場を包んだ独特の緊張感にのまれたのか。ばん回機をうかがったが、ことごとく天を仰いだ。
積極走塁も奏功しなかった。二回先頭で左翼線に安打を放ち二塁を狙ったが、寸前でタッチアウト。「あのプレーは積極的にいったアレなんで…」。ミスを取り返し、藤浪を援護したい気持ちもあっただろう。前面に気迫を押し出したが、突破口になれず。その後の3打席も「(先発八木に)緩急を使われた」と、快音は響かなかった。
キャンプ中、藤浪を「晋ちゃん!」と呼んだ。投手と野手の連係プレーになれば積極的に声を掛け、最年少の緊張を解きほぐした。黄金新人として一身に注目を浴びるが、まだ18歳。11歳下の僚友と目線をそろえ、あえてフレンドリーに接した。
「仲間」を援護できなかった悔しさは簡単に切り替わるものではない。「地元で仕切り直す?そうですね」。腹の底に悔しさを押し込め、帰阪の途についた。良太は内心で目をギラつかせ、雪辱の機会を待つ。
