新井復活弾!弟の前で兄が魅せた!
「オープン戦、広島1-7阪神」(21日、倉敷)
開幕までのカウントダウン。各駅停車じゃ間に合わない。目的地に向かう列車が特急に変わった。左翼を突いた急加速を告げる軌道。低い弾道でフェンスを飛び越えた。復活弾。阪神・新井の気が打球に乗り移った。
力任せでなく、コンパクトに振り抜いた。九回、1死一塁。135キロ直球。トップから最短距離で刀を振り出した。水谷チーフ打撃コーチと二人三脚で体得を目指しているロスの少ない打撃フォーム。桜のツボミが膨らみ始め、淡いピンク色をのぞかせた。
復帰2試合連続安打。六回にはコンタクトを重視したバットコントロールで右前に運び、本塁打でマルチ安打とした。開幕1軍切符をかけた5番勝負。8打数3安打の打率・375。順風な発車を印象づけた。
「良かったです。自分のスイングができたし。自然と体で対応できた。いい感じだね。1日1日を大事にして、しっかりやりたい。今後のテーマ?実戦勘を取り戻すことですね」。右肩後方関節唇(しん)損傷からの完全復活と呼ぶにはまだ遠い。精細な感覚を取り戻し、理想と現実の誤差を極力ゼロに抑える必要性を自らに言い聞かせた。
師もほおを緩めた。「早めに出たな。上からちゃんとたたけてた。バットの軌道が変わってきたよ。本人には励みになるやろうな」。キャンプから早出特打を重ね、試行錯誤を繰り返してきた。水谷チーフ打撃コーチも一定の評価を与えた。
ただ、新井を取り巻く環境は厳しい。前日、和田監督は弟・良太を開幕4番に据える方針を固めた。ベストオーダーを並べたこの日の打順は「3番・DH」。このポジションには22日のオリックス戦から鳥谷が座る。「まだ実戦の数も、打席数もこなしてないから」と和田監督も慎重な姿勢を崩さない。しかし、新井が歩む道は結果で切り開くしかない。眼前にそびえるカベは厚く、高いほど、乗り越えた時に得る財産はかけがえのないものになる。
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