井上拓真 堂々兄尚弥の“露払い” 1回ダウンでヒヤリ場面も「こんな内容じゃ統一戦とか言ってられない」

 「ボクシング・WBA世界バンタム級タイトルマッチ」(6日、東京ドーム)

 WBA世界バンタム級王者の井上拓真(28)=大橋=が同級1位の石田匠(井岡)に3-0の判定勝ちで2度目の防衛を果たした。

 拓真が執念でベルトを守り抜き、勝利のバトンをつないだ。1回、2分過ぎにカウンターの左ジャブが顎に入り、まさかのダウン。東京ドームがどよめきに包まれたが、すぐに反撃を開始した。鋭いアッパーで石田の顔面を血染めにすると、相手の代名詞でもある左ジャブに苦戦しながらも、12回まで集中力を切らさず前に出た。「唯一の収穫は勝てたことだけ」。反省が口をついたが、メイン兄尚弥の“露払い”を務めあげた。

 19年11月以来となる兄弟での世界戦そろい踏み。前回は王座陥落の屈辱を味わったが、大差判定で2度目の防衛に成功し、役目を果たした。「これだけの大観衆の中で競り勝てた、それだけが今日の収穫」と繰り返した。

 同級では4団体で日本人の世界王者が4人並び立つ活況となっている。セミでは同門の武居が初戴冠。また、リングサイドにはWBC王者の中谷潤人(M・T)も訪れた。拓真は試合前「このバンタム級で一番強いのは井上拓真なんだぞというところを見せていきたい」と期していたが、快勝とはいかなかっただけに「まずは今日は勝てたことが収穫。こんな内容じゃ統一戦とか言ってられない。課題をクリアして、もっと強いチャンピオンになりたい」と渋い表情。志の高さが渇望となってあふれ出た。

 ◇井上拓真(いのうえ・たくま)1995年12月26日、神奈川県座間市出身。アマチュア戦績57戦52勝(14KO)5敗。2013年12月にプロデビュー。15年に東洋太平洋スーパーフライ級王座、18年にWBC暫定世界バンタム級王座、21年にWBOアジアパシフィック王座、22年に日本スーパーバンタム級王座、23年にWBA世界バンタム級王座を獲得。身長164センチ。右ボクサーファイター。

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