小橋が翔んだ さらば鉄人、伝説に幕
「小橋建太引退試合」(11日、日本武道館)
小橋建太(46)が魂の185発のチョップで完全燃焼し、25年間の現役生活に別れを告げた。2012年2月19日以来、447日ぶりとなる最後のリングを見届けようと、武道館には超満員1万7000人のファンが集結。小橋は元付け人を相手にした8人タッグ戦で金丸義信(36)にムーンサルトを浴びせ、有終の美を飾った。ケガに加え、06年には腎臓がんも患いながら復帰した鉄人は、嵐のようなコールの中、リングを去った。試合前に行われた引退セレモニーには、野田佳彦前首相(55)、川田利明(49)らが駆けつけた。
最後の瞬間までプロレスを満喫した。マイクを持った小橋はすがすがしい表情で「プロレス人生は自分の青春でした。悔いはありません」と言い切った。
小橋らしい全力ファイトに、超満員1万7000人はくぎ付けとなった。潮崎豪(31)とのチョップ合戦で胸は腫れた。KENTA(32)からは強烈なダイビングフットスタンプを浴びた。遠慮なく“恩返し”してきた元付け人たちには魂を注入。放った逆水平、ローリングけさ切りなどチョップは計185発に達した。
フィニッシュは自身で決めた。武藤敬司(50)からムーンサルトのバトンを受け、虫の息の金丸にボディースラムを見舞い“青春の握りこぶし”。万感のムーンサルトに嵐の小橋コールが起こった。
引き際は自身で決めた。99年に亡くなった師匠のジャイアント馬場さん、09年に死去した兄貴分の三沢光晴さんは引退試合をしていない。昨年7月、医師から引退との二択を迫られ、首を手術。リングでの事故で死去した三沢さんより悪い状態で、現役続行を迷う中、妻で歌手のみずき舞(39)からは「生きていて欲しい」と言われた。
悩んだ末、引退を選んだ。「小橋建太のプロレスができない」という思いに加え、三沢さんの死をむだにしたくなかった。「体の状態が悪い自分がリングに上がり続けていいのか。何かリング上であったとき、野蛮に見られたりするのはプロレスを愛するものとしてつらい。退かないといけないと思った」。
この日、四天王として一時代を築いたノア・田上明社長(52)、川田利明(49)と握手する場面を三沢さんは空から見守った。「三沢さん、馬場さんには心の中で引退しますと、天国に届くように言いました」と話すと、三沢コールがこだました。「しっかり花道を歩いて帰ること、しっかり引退することが恩返し」と誓った2人との約束を果たした。「一つの青春は終わりました。また次の青春で頑張ります」。小橋はけじめのリングに別れを告げた。笑顔が完全燃焼の証拠だった。
