バラエティ番組におけるドッキリとは

 日本テレビ系バラエティ番組「世界の果てまでイッテQ!」で、いとうあさこ(45)が米国の自警団の一員としてパトロール中に、暴漢に襲われるというドッキリで号泣。一部で「シャレにならない」「かわいそう」という声が上がった。ハイヒール・リンゴはこのドッキリそのものは見ていないが、バラエティに出演するお笑いタレントの立場として「本人も事務所もオンエアをOKしたこと」「かわいそうは芸人殺し」と、お笑いのセオリーについて語った。

 ◇  ◇

 一般的に言って、芸人に対して「シャレにならない」って意味がよくわからないんです。芸人本人にとって、泣いているシーンはむっちゃ美味しいこともあるんです。視聴者がその人のためを思って言ってあげたことで、芸人として生きないこともあるんですよ。この番組がどうかわからないけど…でもいとうあさこちゃんも、事務所もオンエアOKって言ったんだから、それでいいんじゃないですか。

 私も昔、テレビ番組の罰ゲームで顔に墨塗られてたことがありました。でもかわいそうやという視聴者からのクレームが来て、その罰ゲームが無くなったことがあったんです。いや私ら全然かわいそうじゃないって。美味しいねんって!普通の人から見たら、先輩が女の子の顔に墨塗ってかわいそう…って、それはホンマに親切心で言ってくれるけど、いやいやその親切心いらんねん。芸人なんやから。墨落としたときに化粧も落ちて「お前、ブサイクやなあ」って先輩にイジられて、それが美味しいねん!ってなるわけですよ。それをかわいそうと言われても…それが嫌やったら、芸人なんてならへんから。頼むからかわいそうって言わんといて!と思ったことは何回もありました。これがあさこちゃんの件にあてはまるかどうかわかりませんが。

 また、隠しカメラでのドッキリが「かわいそう」というのは芸人殺し。本当にかわいそうだったら、事務所判断でやらさへんって。そのために事務所に入ってるんやから。むしろそういう芸風の子はそいうところをイジってあげなきゃ。

 そもそも、そこをイジったら「かわいそう」と表現してしまうことがわからない。素人に同じ事したらあかんけど。芸人は美味しいやん。やりすぎ?いやいや。我々はその刹那に笑ってもらえたらそれでええわけやから。刹那、刹那がつながっていくことで、面白い番組になる。

 方向の間違った優しさで番組に自主規制がかかったら、テレビは面白くなくなっていくと思う。私も昔は結構真面目というイメージがあったんで、やられてかわいそうと思われていました。相方のモモコは何かされてもやり返す、私がやられたらかわいそうとなって放送されなかったことも何度もあった。でもそれは私のリアクションが悪かったんです。私がもっとオンエアに乗るようなリアクションができればよかったけどできなくて。どうしたらかわいそうに見えないんやろと思ってガンガン行くようになったら、いまの私になっちゃった(笑)。

 みんなテレビが面白くなくなったという人がいるけど、その理由のいくらかは視聴者のクレームにありますよね。いまは何かあったらすぐに電話とかSNSとかするから。制作側が萎縮してしまって、クレームが来ないものを作ろうとしてしまう。

 昔、ある局の番組で、毎週いろんな種類のミスコンをやっていたんですよ。そうすると、「ミスコンなんてけしからん!」と、毎週毎週女性人権団体から電話がかかってきてたんです。するとあるときその番組のプロデューサーが「強制はしていないんだから、うちの局を見るな、他局を見ろ!」とガシャンと電話を切った。私もビックリしたけど、そういう時代だったんですよ。いまそんなことは無理。録音されてYouTubeに流されて、その局は炎上する。つくづくバラティ番組にとって難しい時代になりましたね。

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