【ライフ】園田に生まれたニュースター
兵庫・尼崎市の園田にニュースターが誕生した。といっても競馬の馬の話ではない。「おかえり園田くん」。添い寝枕の話である。
ロフトや東急ハンズ、ヴィレッジバンガードなどを中心に販売され、20~30代のOLを中心にひそかなブームを呼んでいる。でっぷりとしたお腹に極短の足。腹巻きを巻いていたりもする。なんともおっさんくさいそのフォルムがウケるのは、アラフォー記者にすれば不思議そのもの。だが、もっと不思議に思ったのは、その設定だ。
「頑張っている人の前にだけ現れる、園田駅付近在住の白い猫。おかえりを言うため、昼は昼寝をしている」
名前でもしやとは思ったが、これは間違いなく阪急神戸線の園田駅に違いない。
阪急沿線で1、2を争う存在感のなさ。急行も止まらない。あるのは競馬場と、その勝者のみが行くことを許される無駄に大規模なスナック街だけ。そんな“なにもない”「園田」が、キャラクターの名前に採用されることがあるだろうか。いや、ない-。何を隠そう園田在住の記者。自虐的な諦観と裏腹に、隠しきれない期待を抱えて、開発元となる小泉ライフテックス株式会社(本社大阪市)に訊いてみた。
「園田くんは確かに阪急神戸線・園田駅の設定です」
期待通りの回答に思わずガッツポーズする記者。おらが町にニュースターが誕生したぞ!
こうなると次に気になるのは、なぜ園田だったのかという点。
「これが、実は特に理由はないんです」
MDの原山さんは苦笑い。
「新入社員のデザイナーが入社前から考えていたキャラクターで、設定や名前は彼女の妄想というかインスピレーションなんです」
園田の街自慢を期待する記者には、やや拍子抜けの回答。そこでデザイナーの坂東さんを直撃すると、「園田駅に行ったことはありません。言葉の響きがいいのと、イントネーションが複数あるのがおもしろいなと。あとは駅前の写真を見せてもらったときに、“なにもない”のがイメージにピッタリだったんです」
“なにもない”ことにダメ押しされてしまったことはショックだが、今回ばかりは、それが功を奏したということか。たしかに兵庫県で言うと「おかえり芦屋くん」でも「おかえり六甲くん」でも、違う気がする。
記者を慰めるように、原山さんがひとつのエピソードを教えてくれた。
「子どものいない夫婦が『園田くん』のおかげでケンカが減ったというファンレターが届きました。まるで“仲裁”するかのように、家庭で存在感を発揮してくれているみたいです。やはり、なんとなくミステリアスな響きのネーミングが良かったのでしょうね」
決まった理由はともあれ、多くの家庭に“園田発”の癒しが届けられていると思うと悪くない。坂東さんがいうところの「何でもない、どこにでもいるネコ」の活躍を、密かに誇りに思いながら、陰ながら見守りたい。
(デイリースポーツ・百瀬啓太)