【ライフ】女子禁制?男の料理教室潜入

 「イクメン男子」という言葉が世間をにぎわせたのも記憶に新しい。男性の育児や家事に対する意欲が高まっている昨今、予約がすぐに埋まってしまうほど人気の男性料理教室が各地に存在するという。「イクメン男子」ならぬ「カジメン男子」を探すべく、肉食フードライターが女子禁制?の男性料理クラスに足を運んだ。

 今回訪れたのは、一般財団法人ベターホーム協会が開講している大阪・梅田教室の「お料理はじめての会(男性クラス)」。同協会は、北は北海道から南は福岡まで、首都圏を中心に18教室で、和洋中や手作りパン、お菓子のクラスを展開している。日本の急速な高齢化に伴い、男性の定年後の自立を支援するため、1991年に始めた「60歳からの男の基本料理の会」。1年目は全国で360人が参加し、1995年には1250人、2016年現在で約6500人を突破した。男性クラスは「女性と一緒では気が引ける」というシニア世代に特に好評を集めているという。

 午前9時半、朝早くから続々と“ご出勤”するのは、年齢層が高めの受講生たち。平日の午前クラスとだけあって、仕事を引退された60歳代以上の方が多く集まる。元気なあいさつが交わされるとすぐさま、エプロン、三角巾の“仕事着”に変身。取材した4月某日は、5月開講クラスの1年の総仕上げと題して、「鶏肉の竜田揚げ」をメーンに「ひじきの煮物」、「菜飯」を学ぶ。

 午前10時、まずはこの道15年のベテラン女性講師・小野チーフが教壇に立ち、料理の前半の手順を説明しながら見本を見せる。受講生たちの視線は講師の一挙手一投足にくぎ付けだ。「男性を教えて10年以上」と話す小野講師は、これまでの回で指導してきた調味料の測り方をもう一度おさらい。この日使用する鶏肉の切り方のコツをはじめ、ひじきの種類の説明にはメモを取る受講生の姿も目立った。一通り説明が終わると八つのテーブルへ4人ずつに分かれ、一人ずつに分けられた各材料を確認。いざ前半の実習開始!と思いきや…「あれ?何から準備するんだっけ?」、「最初の方の手順を忘れてしまう」というお茶目な声も聞こえた。それでも包丁を握らせば指導通り“鶏肉4センチ角”に切り、さじを持たせば“みりん大さじ1”をきっちり測る。日本男児の勤勉さは料理作りにも表れていた。

 ひじき煮のいい香りに包まれながらほっと一息。後半の説明と実習へ。いよいよメーンとなる鶏肉の揚げにかかる。ほとんどの受講生が揚げ物初挑戦とあって、先ほどの休憩から一変、真剣モードに突入。2人が竜田揚げに取りかかっている間に別の2人が菜飯作りとひじき煮の盛り付けを担当する。自分の鶏肉は自分で揚げるルールに従って途中で交代していく。各グループから質問が飛び交い、3人の講師たちも慌ただしくテーブルを回っていく。匂いにつられ、そ~っと鍋をのぞいてみると、きつね色に染まった見た目にも美味しそうな竜田揚げがその時を今か今かと待っていた。美味しいサインである“赤茶色”になったら出来上がり!フリルレタスとトマトを添えて彩り豊かに盛り付けていく。

 力を合わせて作った3品の盛り付けが終わったグループから、いただきまーす!と、その前に、お決まりの写真撮影。「家に帰ったら妻に見せる」と、完成した自慢の作品の撮影を忘れてはいけない。まるで自分の子ども、孫を愛でるように目で楽しんだ後にようやく口へ運ばれると、受講生たちからは笑顔があふれた。大仕事をした後に食べるご飯は人一倍美味しいはずだ。それでも「結局は妻のご飯が一番」と“オノロケ”も聞こえた。活発な受講生の中には、揚げ物は得意でハイキングの際は自分でお弁当を作るというハイレベルな方もいた。教室で仲間たちとワイワイ楽しみながら学ぶことと、孫の「美味しい」という声を聞いては料理をする意欲が増していったという。

 5月開講クラスの最終日だったこの日は、修了セレモニーが行われた。小野講師から優秀な成績を収められた受講生たちに修了書が手渡され、「生きた命を頂く感謝、作り手への感謝、料理を通して身体も中身も成長していると思います」という贈る言葉も添えられた。「自分で材料を測るのが難しいから」と家では料理に挑戦できていなくても、「皿洗いや買い物は手伝うようになった」というその心がけがまさに成長の証と言える。また、この日は準備から後片付けまで、予定終了時刻よりも早く終えられた。料理の腕が上がっている証拠だ。協力し合って1年間“同じ釜の飯”を食べる仲間との絆は深まるもので、打ち上げを計画するグループもあった。「最初はぎこちなかったのに」と小野講師も受講生たちの成長をほほ笑ましそうに見ていた。

 普段当たり前に食べていた料理の作り方に悪戦苦闘しながらも、熱心に取り組む姿はまさに、理想のおじいちゃん、お父さん。シニア世代だけでなく、平日の夜や休日には若い男性も女性と混合で料理を学んでいるという。「カジメン男子」とは意欲的かつ、食べること、作ってくれる人へのありがたみを持った生活意識の高い人のことをいうのかもしれない。不器用だから無理!と言わず、まずは皿洗いで“できる男”を演じることから始めよう。(デイリースポーツ・疋田有佳里)

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