【野球】巨人ドラ3与那原は琉球の怪腕

 巨人がドラフト3位で指名した普天間の与那原大剛投手。190センチ、88キロの恵まれた体格から繰り出す最速148キロの直球は威力十分だ。ここ1年で球速が12キロアップした要因は何だったのか-。“うちなータイム”と言った沖縄の風土を感じさせない、意識の高さにあった。

 上空では米軍機のごう音が鳴り響く。他の部活動と共用のグラウンドを使えるのは、平日でわずか1時間30分。決して恵まれているとは言えない環境からでも、スケール抜群の与那原はプロ10球団から注目を集めるまで飛躍。ドラフト会議では巨人から3位指名を受けた。

 甲子園出場がなく、最高成績は今夏沖縄大会の8強。それでもプロから高い評価を受けた与那原について知念正仁監督は「意識の違いですよね。何をしたらいいか、本人が考えてやってきた」と明かす。グラウンドを使えなくても、校内でのトレーニング、日課とする早朝ランニングで練習不足を補ってきた。昨オフに同校野球部の先輩から体幹トレーニングの重要性を教わり、徹底して体の軸を鍛えてきた。

 2月の段階ではまだ軸が固まらず、投球フォームにブレが生じていた。大きな体格を持て余すようなイメージだった。だが体幹の強化が実を結んできた春先。明らかにボールは力強さを増した。体格の大きさに加え球離れが遅くなったことで、プレートからホームベースの距離が近く感じるようになった。

 ストレートの強さはプロに入っても十分に通用するレベル。本人は「どんどんスピードが上がっていくのが楽しかった」と同時に「自信を持ってマウンドに立てるようになった」と言う。

 さらに「スカウトの方も見に来ていただいたので」と明かすように、視察に訪れたスカウトの姿も大きな励みになった。「プロに行きたかったので。志望届を出したのも少しでも可能性があるならばと思って決めました」と与那原は力を込める。

 急成長を遂げた要因とされる意識の高さ-。その背景にはある思いがあった。中学3年で進学先を決める段階になった時、本土の強豪私学6校から誘いを受けた。だが与那原は「まだ中学生でしたし、親元を離れて野球をやることは考えられなかった」と断り、普天間への進学を決めた。

 近年、沖縄から本土の甲子園常連校へ野球留学する選手は多い。今夏の甲子園でも沖縄から野球留学した選手は多数いた。だが普天間は公立の進学校。環境の違いは歴然としており「周囲から『何でここに来たの』と言われたこともあった」と明かす。

 「それを見返してやろうと。ここで頑張って、自分の選択は間違っていなかったと言えるように」。そう与那原は力を込める。自らの決断が間違っていなかった-。胸を張って言えるように努力を重ねてきた。そして今、プロの門をたたこうとしている。性格的な芯の強さは厳しい生存競争を生き抜く上で大切な要素。筋力や技術などプロに入ってさらに成長できる伸び代もありそうだ。将来のエース候補に-。琉球の怪腕は、確かな可能性を秘めている。(デイリースポーツ・重松健三)

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